フレディやウォーホルにも影響を与えた!アートで“ゲイ・カルチャー”に革命を起こした男とは?<写真11点>
同性愛が厳しく罰せられていた第二次世界大戦後のフィンランドから、鉛筆1本でゲイカルチャーに革命を起こした実在のアーティストを題材にした『トム・オブ・フィンランド』が現在公開されている。ゲイアートのアイコニックな男性像を生み出した男の素顔とは…?
偏見の多いゲイ・カルチャーに多大なる影響を及ぼしたトム・オブ・フィンランドの半生を、20歳前後から晩年まで長いスパンで描いた本作。
第二次大戦帰還兵のトウコ・ラークソンは、フィンランドでは同性愛が法律で禁じられているため、昼は広告会社で働き、夜は鍵をかけた自室で戦地で出会った男たちのたくましい姿を描き続け、自分のファンタジーで欲望を発散させていた。肉体労働者や兵士をモチーフに、バイカーファションなどを加えたトウコの作品は、次第にアンダーグラウンドで支持を集めていく。そして1957年、ゲイに人気のアメリカのフィットネス雑誌の表紙を“トム・オブ・フィンランド”の名で飾ったことで、彼に転機が訪れることに…。
Physique Pictorial誌に掲載された、上半身裸のきこりの絵をはじめ、トムが鉛筆1本で描いた作品はどれもがっしりとした筋骨隆々で体格のいい男性たち。そこにレザージャケットをまとい、立派なヒゲを蓄え、下半身はピタッと体に密着したズボンを履いて股間の部分を強調したワイルドな姿で扇情的なポージングを決めたものばかり。当時のゲイの男性たちは、社会から“なよなよ”としたひ弱なイメージを押し付けられていたが、実際の友人たちをモデルにした力強い彼の絵は、多くの当事者が理想とするポジティブな男性像として人々の共感を呼んでいくことに。
その影響を受けた人の中には、著名人も多く、クイーンのフレディ・マーキュリーをはじめ、アーティストのアンディ・ウォーホルや、ロバート・メイプルソープ、デイヴィッド・ホックニー、さらにデザイナーのジャン=ポール・ゴルチエに、トム・フォードなど、そうそうたる顔ぶればかり。また2014年にはフィンランド郵便から記念切手が発行されており、国の先進性を象徴する英雄として国民から認識されているのだ。
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トムが様々な困難に立ち向かいながらゲイカルチャーに革命を起こしていく姿、そして彼の描いた刺激的な作品たちを、ぜひスクリーンで確認してほしい。
文/トライワークス