タブーに斬り込む90歳の現役“セックス・セラピスト”。彼女が語る、3つの金言とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
タブーに斬り込む90歳の現役“セックス・セラピスト”。彼女が語る、3つの金言とは?

コラム

タブーに斬り込む90歳の現役“セックス・セラピスト”。彼女が語る、3つの金言とは?

アメリカで30年以上にわたってテレビやラジオで活躍している、セックス・セラピストのドクター・ルースこと、ルース・K・ウエストハイマーの半生をつづったドキュメンタリー『おしえて!ドクター・ルース』(公開中)。性の話題を公にしづらかった80年代のアメリカで、チャーミングなキャラクターと明快な語り口が話題を呼び、全米で大ブレイクしたルース。90歳を超えたいまも、メディア出演や講演活動で全米を飛び回る彼女の金言の数々から、あなたをエンパワメントしてくれる3つの言葉を紹介する!

90歳の現役セックス・セラピストの言葉に勇気がもらえる『おしえて!ドクター・ルース』が公開!
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「性にノーマルなどないわ!」

80年代初頭からラジオのお悩み相談番組にセックス・セラピストとして出演するようになったルース。例えば、男性から寄せられた「サイズは重要?」という疑問に対して、ルースは「いいえ」とバッサリ。続けて彼女は「サイズなんて関係ない。女性の満足とは別問題よ」と喝破する。さらに男性から、道具を使うことについてどう思うか?という相談にも、彼女は「あなたは奥さんが使うのを見たい?」と逆質問。男性が「ええ」と答えると笑顔で「じゃあ買いに行って!」とアドバイスする。

【写真を見る】「恋人の喜ばせ方を教えてあげるわ!」と快活に語るドクター・ルースに男性陣もタジタジ
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そんな彼女がことあるごとに言葉にしたのが「性にノーマルなどない」というフレーズ。性について語りづらい風潮が続いたアメリカ社会の中で、生きづらさを抱えていた女性やセクシャル・マイノリティの人々にも大きな勇気を与えてきた。

スケジュールは常にパンパンで全米中で講義や講演を行っている
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「自分を責めないで」

とあるテレビ番組でルースは、避妊の失敗により中絶に至った女性から「後悔しているんです…」と相談を持ちかけられる。彼女は相談者の顔を真剣な表情で見つめながら「自分を責めないで」と一言。ルースはその長いキャリアを通じて“妊娠中絶は合法でなければならない、罪になるのはおかしい”と訴え続けた。人工妊娠中絶の是非が大統領選挙の一大争点となるアメリカでは、現在でも中絶を原則禁止としたり、妊娠6週間以降の中絶を禁止するという“中絶権”を制限する動きも広がりつつある。2019年現在でも“妊娠中絶”によって社会の分断が続くアメリカ社会。ルースは常に当事者である女性に寄り添い守るため、励ましの言葉を投げかけ続けている。

性にまつわる悩み相談だけでなく、エイズ患者への偏見をなくすべく立ち上がり、LGBTの人々にも心を寄せてきた
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「痛みや孤独など、誰にも救えないことについては話さない」

1928年にドイツ・フランクフルト近郊の村でユダヤ人の両親の元に生まれたルース。10歳まで平和に暮らしていたものの、1938年に父親がナチスに連行されてしまう。そして、父はルースの将来を案じ、彼女をスイスに疎開させるように手紙を送る。第二次大戦終了後、家族の生死もわからないままルースは、パレスチナへと渡り、ユダヤ人地下軍事組織へ参加。そしてイスラエル兵を守るスナイパーとしての訓練も受けることに。

ナチス・ドイツの台頭により、10歳で親元を離れてスイスの養護施設へ疎開しなければならなかった
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そのような過酷な境遇の中でも学ぶことを諦めなかった彼女は、ソルボンヌ、コロンビア大学、コーネル大学を渡り歩いて博士号も取得。2度の離婚と3度の結婚、シングルマザーとして我が子を育てなければならない時期もあったが、常に前向きで明るく振る舞い、不屈の意志で輝かしいキャリアを手に入れた。彼女の子どもたちによると、母親がホロコーストについて話したり泣いたりするところを見たことがないそう。「ドイツ系ユダヤ人は人前で泣かない」というのも、彼女の有名な言葉だ。

暗い過去を感じさせない笑顔で周囲を勇気付ける
暗い過去を感じさせない笑顔で周囲を勇気付ける

ドクター・ルースの壮絶な半生と、それを感じさせない彼女の快活で愛くるしいキャラクターが存分に描き出された本作。彼女にしか語ることができない優しさとユーモアに満ちた言葉の数々を聞けば、明日を生きる活力をもらえるに違いない!

文/トライワークス

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