ニコラス・ホルトが気づいた、J・R・R・トールキンとあの映画監督の類似点とは?
現在、口コミで「作家トールキンの人物像を、初めて知った!」「芸術が、人生においてなんの役に立つのか?という問いのような作品」「秘密クラブ<T.C.B.S>の4人が尊い…」など様々に評判を呼んでいる『トールキン 旅のはじまり』(公開中)。英国が誇る文豪J・R・R・トールキンを演じているのは、ニコラス・ホルトだ。トールキンは、映画化された「指輪物語」や「ホビットの冒険」の原作者として日本でも多く読まれている作家だ。どんな風に役に向き合い、トールキン役を演じたのか?
トールキンは、文学界はもちろんゲームや映像などジャンルを超えて”ファンタジー”というジャンルの礎を築いたと言っても過言ではない。そんな著名な人物を演じるにあたり、重圧を跳ね除けるために身体性を駆使したのだという。
「実在の人物を演じる時は、それがどんな人物だとしても、そして特に信奉者の多い著名な人物の場合は、そのプレッシャーを克服することが一番難しい。前にも同じような経験があって、その時も大変なプレッシャーを感じていたよ。そして気付いたのは、人物の本質をとらえることが大切だということ。キャラクターが話す言葉を覚えたり、作ったりすることもそうだし、今作ではトールキンがいかに言語の素晴らしさを認識していたかということや、言語を耳で聞いた時の美しさを直感的に捉えることができる能力を持っていたことなどが、このキャラクターを演じるにおいて重要な要素になっていった」
また、リバプールのビアホールや、オックスフォードに残るトールキンが良く訪れたというパブに共演者たちと通い、青年時代のトールキンが感じた空気を感じることも、彼を演じるヒントになったという。
「思いもよらないことがキャラクターにとても親しみを感じるきっかけになることがあるもので、オックスフォードのEagle &Child(トールキンが通ったと言われているパブ)にみんなと一緒に行って、トールキンとその友人達が座っていたという一角に座ったら、不思議なことにとてもスピリチュアルな気持ちになったんだ。わかるかな?何十年も後に僕達は当時の彼らと同じ場所で、同じように乾杯している。この体験にはとてもインスパイアされたね」
また、ニコラス・ホルトの考察によると、偉大なる文学者と独創的な映画作家の間にある共通点を見つけたそうだ。
「日常のふとした瞬間におもしろいことに気づかされることがあるものだよね。この間『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の話をしていて興味深いと思ったんだけど、トールキンとジョージ・ミラー監督は、実はとても似たもの同士だと気付いたんだ。どちらもとても独創的なクリエイターだけど、なぜかお互いを彷彿させるところがある。ジョージ・ミラーとはかなりの期間ずっと一緒に過ごしてきて、もちろんトールキンに会うことは叶わないわけだけど、晩年のトールキンのインタビューを読んだとき、2人には類似点が多々あるのに気がついたんだ。どちらもとてもクリエイティブで頭が切れる、そしてアイデアがどのようなところから湧いてくるのか、そしてそれらに歴史が織り込まれているということなど、2人の脳は同じような感じで機能しているんじゃないかなと思ったんだ」
構成・文/平井伊都子