“傘”で敵を圧倒!?水墨画の世界観を表現した、巨匠チャン・イーモウ監督作のアクションが美麗でユニーク!<写真15点>
世界3大国際映画祭で最高賞を含む数々の栄誉に輝いてきた、中国の巨匠チャン・イーモウ監督が「自分が本当に撮りたい物語と巡り合った」と語る最新作『SHADOW/影武者』(9月6日公開)。数々の武侠映画を手掛けてきたイーモウ監督だが、本作では“傘”を使ったユニークなアクションが炸裂している!
「三国志」のエピソードを大胆に脚色し、影武者の存在を題材にした本作。領土の一部を奪っていった強大な炎国とは休戦同盟を結んでいるが、いつ攻めて来られるかと不安な日々を送る弱小の沛(ペイ)国。国内も王を筆頭とする平和派と重臣の都督率いる開戦派に分かれていた。そして、炎国の楊蒼将軍に勝負を申し込んだ都督だが、実は1年前から病を患っており、影武者を特訓し、戦いに挑もうとしていた…。
これまでも『HERO』(02)、『LOVERS』(04)などの武侠アクションを手掛けてきたイーモウ監督。広大な王宮を舞台にした戦闘での大量の弓が一斉に飛んでくるというスペクタクルな映像や、まるで舞を踊っているかのようなスローモーションを効果的に取り入れた優雅な剣戟など、鮮やかな色づかいの美しい映像と共に革新的なアクションを描き、観客の度肝を抜いてきた。
『SHADOW/影武者』でも、映像美と斬新なアクションを組み合わせたイーモウらしさは健在。本作は水墨画をイメージしており黒と白が彩る世界観の中、直線的な楊蒼将軍の剛の動きに対し、円を描く筆のようにしなやかな柔の影武者というアクションが構築されている。
そんなアクションを象徴しているのが、影武者をはじめ沛国の兵士たちが使う武器の傘。生地の部分が重ねられた刃になっており、相手の強烈な一太刀に対しても回転させながら刃と刃で挟み込んで勢いを殺してしまったり、また時には傘と傘の間に体を潜めて、独楽のように回転し敵の弓から身を守りながら移動したり、観たことのない斬新なアクションには心奪われてしまうことだろう。
水墨画のような美しい映像と、その世界を動きで表現した見事なアクションからは浮世離れしている印象を受けるが、実は本作では視覚効果とCGはほとんど使われておらず、生身ならではの切迫感もスリリングな本作。観るものの予想をはるかに上回ってくる巨匠の仕事ぶりを、大きなスクリーンで楽しまないと損だ!
文/トライワークス