『洋菓子店コアンドル』初日挨拶で蒼井優「注げるだけの愛情を注いだと自負しています」

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『洋菓子店コアンドル』初日挨拶で蒼井優「注げるだけの愛情を注いだと自負しています」

東京の洋菓子店を舞台に、過去を引きずる伝説のパティシエと、上京したばかりの女性の見習い店員との交流を描いた『洋菓子店コアンドル』が公開初日を迎え、主演の江口洋介、蒼井優らが舞台挨拶を行った。バレンタイン間近ということで、劇場にも登場したようなスイーツも登場し、会場は甘い香りに包まれた。

8年前にケーキ作りを突如としてやめてしまった十村(江口洋介)は、依子(戸田恵子)が営む洋菓子店“パティスリー・コアンドル”で、鹿児島弁丸出しのなつめ(蒼井優)と出会う。なつめは、恋人の海(尾上寛之)を追って上京したが、コアンドルで修業中だったはずの海は、既に店を辞めていた。行くあてもないなつめは、依子に店で働かせてほしいと頼む。一人前のパティシエになるべく奮闘するなつめ。十村はそんな彼女を厳しくも温かな眼差しで見守り続ける。そんなある日、大事な晩餐会を前に依子が事故で大怪我を負ってしまう。

本作で気の強い鹿児島県出身の女性に扮した蒼井優は、「私の演じたなつめは感情の起伏が激しいので、こちらの江口さん(洋介)やこちらの江口さん(のりこ)のお家に乗り込んだりするんですが、どちらも撮影は午前中で、朝の6時過ぎから鹿児島弁でしゃべらなきゃいけなかったのが難しかったです」と撮影の苦労エピソードを明かした。

心に傷を抱えた元天才パティシエを演じた江口洋介は「パティシエということで、ケーキを作るシーンが多いので、道具を買って、家で作ったりしました。それが映画の中でも伝説のパティシエらしく見えているなあと自画自賛しました」と自らの演技に満足した様子。

監督・脚本を手掛けたのは、『60歳のラブレター』『白夜行』と作品が続く人気監督の深川栄洋。先日、本作がサンタバーバラ映画祭でアジア映画部門の最高賞を受賞したことについて、「映画祭で賞をもらえるようなアーティスティック作品ではないし、人と人との結びつきを描いた作品。日本の喜劇や人情物語がアメリカのお客さんにも響いたのかなと、是非感想を聞いてみたいですね」とコメントした。

洋菓子店を営むオーナーシェフを演じた戸田恵子は、「加賀まりこさんが入ってらしゃった時は、まるでフランス映画のような雰囲気で、絵ハガキにしたいような雰囲気でした。撮影セットで作ったお店も、そのまま営業したら良いんじゃないかなって思うほど、可愛らしいお店でした」と撮影の思い出を振り返り、店で働くスタッフを演じた江口のりこは、「私もケーキ作りを練習しました。でも実際映画を見たら、私はテーブルばっかり吹いていて、すごく残念だなと思いました」と会場の観客を笑わせた。

また、舞台挨拶後半には、バレンタインデー間近ということで、司会者からバレンタインでの思い出についての質問が飛んだ。それに対し、江口洋介は「そんな披露する話はないですよ。チョコはもらうと嬉しいけど、結構照れくさいですね」と答え、蒼井は「中学生の頃に、スタッフさんにプレゼントしようと思っていたチョコを、当時のマネジャーさんがグチャグチャにしてしまったっていう思い出くらい」とコメント。江口のりこも「私もあまり思い出はありません、これから幸せになれたら良いなと思います」と話し、司会者から「今回の出演をきっかけに、ケーキを作られてみては?」と言われても、「うち、オーブンないので」とあっさり否定していた。戸田も「2月のイベントといえば節分と答えた、そんな程度の女です」とやや自虐的。尾上寛之が「好きな女の子に自分からチョコをあげました」と、一人明るく話すも、特にハッピーなエピソードが披露されることなく、ややしらけたムードに。そんな中、用意されたケーキが登場し、江口洋介は「これはラズベリーですね。ありがとうございます」と頬を緩めていた。

最後に蒼井が「小さな世界の小さなお話ですが、注げるだけの愛情は注いだと自負しています。こういう映画も良いんじゃないかなと思います。皆さんと温かい気持ちを共有できたら良いなと思います」とメッセージを送り、江口洋介も「人生辛いことだけでもないし、簡単でもない。でもケーキがあればそれだけで幸せな気持ちになるような作品。良い映画になっていると思います」と作品の魅力をアピール。劇場で作品の放つ甘い香りと温もりに包まれてみるのも良いだろう。【取材・文/鈴木菜保美】

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