18歳の注目俳優・板垣瑞生の成長の鍵は?『ソロモンの偽証』や菅田将暉との“大切な出会い”
ボーカルダンスグループ「M!LK」としても活躍する若手俳優の板垣瑞生が、仁科裕貴の同名小説を映画化した『初恋ロスタイム』(公開中)で映画初主演を飾った。「初主演を、誰かの人生の希望になるような映画で務めさせていただいた。これからの力になる気がしています」と目を輝かせる板垣。中学生の時に訪れた、人生の転機。そして「背中を追いかけていきたい」という憧れの存在など、18歳の胸の内を明かしてもらった。
諦めグセのついた浪人生の青年、孝司(板垣)が、世界の人、モノ、車など、あらゆるものがピタリと静止するという不思議な現象に遭遇。そのなかで唯一、自分以外に動ける少女、時音(吉柳咲良)と出会い、輝くような恋を経験するという青春ラブストーリーだ。
「僕も好きになった人のためだったら、きっとなんでもしたいと思う」
オーディションを受け、映画初主演という大役を手にしたが、「主演も初めてだし、キラキラとした作品もいままであまり経験もなかったので、挑戦することがたくさんありました。でも、プレッシャーというよりも、ワクワクしていましたね」と前のめりの姿勢で飛び込んだ。「いままで、主演を務められている先輩の背中をたくさん見てきました。僕も主演としてしっかりと責任を持ちたいと思いながらも、“座長”という感じではなく、みんなで楽しくやろうと心掛けていました」とチームワークを育みながら、撮影に挑んだという。
孝司が、時音との出会いを通して成長していく姿が大きな見どころ。あらゆることに無気力だった孝司だが、時音と過ごすなかで毎日が輝きだす。役作りでは「孝司の想い、表情、見た目などをグラフ化や数値化して考えていきました」と、成長過程を演じるために試行錯誤したと話す。「彼女のためだったらなんでもしたい」と恋をした相手にまっすぐ向き合っていく孝司には共感もできたそうで、「僕も好きになった人のためだったら、きっとなんでもしたいと思うはず。それくらい人を好きになれるなんて、すごく憧れます」と、理想の恋愛像も体現できた様子だ。
「僕にとっても“願掛け”のような映画になった」
映画『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』 (15)で14歳にして日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞、NHKドラマ「精霊の守り人」シリーズでの演技も高い評価を得た板垣。躍進中の18歳にとっても、映画初主演作は役者人生においてたった一つのメモリアルな作品だ。
本作で初主演を務められたことに「僕がこれまで経験したことのないものを、ギュッと凝縮して挑戦させてもらった気がしています」と感無量の面持ちで、「撮影を終えて、爽快感がありました。みんなともすごく仲よくなれたし、(河合勇人)監督ともたくさん話し合いができた。すごくいい現場だったんです!」と充実感をにじませる。
「“青春キラキラ”なラブストーリーというのは、多くの役者さんが通る道のりだと思うんですが、本作は無理に壁ドンしたりする映画ではなく、すべてにリアルな想いが込められていると感じました。キラキラもしているし、ファンタジーでもある青春映画だけれど、そのなかにしっかりと真実味がある。それがすごくいいなと思ったんです。希望のある映画だとも感じています。僕にとっても“願掛け”のようで、これからの力になる気がしています」と今後の役者人生にも希望をあふれさせていた。
「ライバルは望月歩くん。憧れは菅田将暉さん!」
“諦めない力”が物語の鍵を握る映画にちなみ、板垣にとって「この時に諦めないでよかった」と思う経験を聞いてみると、「『ソロモンの偽証』の撮影は、本当に大変でした」と告白。『ソロモンの偽証』と言えば、同級生の死をめぐって真実にたどり着こうともがく中学生を、等身大のキャスト陣が体当たりで熱演した作品だが、同世代が集った現場は刺激にあふれたものだったという。
「オーディションを受けて、半年くらいリハーサルを重ねて撮影に臨みました。裁判のシーンもすべて長回しで撮ったんです。当時の僕はまだ中学2年生でしたが、大変だからこそ、ものすごくやりがいを感じていました」と微笑みながら、「成島(出)監督にもたくさんのことを教えていただきましたし、あの時に共演した仲間の存在って、僕にとってすごく大きな力になっていて。みんなが頑張っていると、僕も『負けていられないな』と思うし、彼らに恥ずかしくないような自分にならなきゃなと思う」と力強く話す。
自身のライバルなような存在として、『ソロモンの偽証』で共演した望月歩の名前をあげる。「歩も今年、『五億円のじんせい』で映画初主演を務めていました。『ソロモンの偽証』でもライバルのような関係性を演じさせていただいたんです。仲もいいし、なんだか通じるものも多くて、どうしても意識してしまう存在です」。では憧れの存在は?「映画デビュー作『闇金ウシジマくん Part2』でご一緒させていただいた、菅田将暉さん。菅田さんはお芝居もすばらしいですが、人柄もすごくステキな方で。僕は当時、ものすごく面倒をみていただいて、役者業に本気になったのも『菅田さんとまた共演したい』と思ったことが、大きな理由なんです。それがいま、僕の一番の夢です」と胸の内を吐露する。まっすぐで澄んだ眼差しにも、誠実な姿勢が現れている。大切な出会いを重ね、一歩ずつ前進している板垣瑞生に注目だ。
取材・文/成田 おり枝