宮沢りえ「家庭もちゃんと守って、仕事では攻めまくるのが理想」表現者としての家庭観に持論
太宰治のスキャンダラスな恋と人生を小栗旬主演で映画化した『人間失格 太宰治と3人の女たち』(公開中)の舞台挨拶が9月23日に新宿ピカデリーで開催され、宮沢りえ、蜷川実花監督が登壇。小説家としての才能にあふれながらも恋の噂が絶えないダメ男、太宰を支える正妻を演じた宮沢が、「自分では、表現者としては、家庭もちゃんと守って、仕事では攻めまくるのが理想かなと思います」と家庭観について持論を語った。
太宰治が死の直前に完成させた「人間失格」の誕生秘話を、太宰自身と彼を愛した3人の女たちの目線から描く本作。小栗が太宰を、太宰の正妻の美知子役を宮沢、太宰の愛人役を沢尻エリカと二階堂ふみが演じた。
劇中では、正妻の美知子が「家庭を壊してでも、作品をつくってほしい」と太宰の背中を押すシーンがある。宮沢は「私は常々、役者でも小説家でも監督でも、クリエイティブな仕事をしている方たちって、どこか太宰に近いようなもろさや、せつなさ、力があるものだと思っている」と口火を切り、「人間としてはなかなか成立していないけれど、表現者としては最高だという人は多いじゃないですか」とニッコリ。
さらに「そんな彼を支える妻としては、『自分たちを壊してでも作品をつくってください』と言えた彼女は、一番の理解者だったし、応援していた人だったし、ファンだったと思う。彼女はとてもつらかっただろうけれど、作品を愛し続けていられた時間はとても幸せだったんじゃないかと思う」と美知子に寄り添い、「夫婦という枠を超えて、人間同士の強いつながりがあったんだろうなと思う」と太宰と美知子の夫婦について思いを巡らせていた。
「家庭も守り、仕事は攻める」が理想という宮沢だが、「なかなかそういうのは難しい」と苦笑い。蜷川監督が「そうありたいと思って、あがいてます。バランスを取るのは難しい」と大きくうなずくと、宮沢は「実花監督は攻め続けているし、壊し続けているし、この欲張りさは憧れる」と蜷川監督のものづくりの姿勢に惚れ惚れとしていた。
蜷川監督の父、蜷川幸雄を介して知り合ったという2人だが、蜷川監督は「どうしても、この役はりえちゃんにやってもらいたいという気持ちが強くて。熱い想いをお伝えした」と熱烈オファーをしたそうで、「現場では奇跡の連続というか、こんなことが起こるんだなということを体験できた。私にとってもすばらしい経験だった。やっぱり、りえちゃんにしかできなかったなと思う」と感無量の想いを吐露する。
宮沢も「いつかなにかやろうねと話していた。“やっと”という気持ちもあり、これだけ温めてきた関係を大事にしたいから、絶対にがっかりさせたくなかった」と強い意気込みで臨んだことを明かしていた。
取材・文/成田 おり枝