『タクシードライバー』マーティン・スコセッシ監督、『ジョーカー』に協力していたことが明らかに
孤独だが心優しい男アーサーが、いかにして“悪のカリスマ”ジョーカーへと変貌していったのか。世界中で話題を集めている映画『ジョーカー』が公開中だ。実は本作に『タクシードライバー』(76)や『グッドフェローズ』(90)、『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02)などの名匠マーティン・スコセッシ監督が協力していたことが明らかとなった。
かつてヒース・レジャーやジャック・ニコルソン、ジャレッド・レトといった名だたる俳優たちが、それぞれのキャラクター性を発揮し魅力的に演じてきた“ジョーカー”。本作は、そんな映画史上最も有名なヴィランとも呼ばれる彼の誕生の理由が描かれる完全オリジナルストーリーとなる。母親の教えどおり「どんな時も笑顔で」世界を笑わせようとコメディアンを夢見るアーサー。かいがいしく母親を看病しながら都会の片隅でひっそりと暮らすが、弱者に無関心な社会、劣悪した街の空気がアーサーをむしばんでいく。
アメコミ映画の枠にとどまらず、第76回ヴェネツィア国際映画祭では最高賞となる金獅子賞を受賞。本作で凄まじい演技を魅せつけた主演のホアキン・フェニックスは、アカデミー賞へのノミネートが確実視されている。
そんな本作だが、製作に名を連ねるのでは?と話題となっていたマーティン・スコセッシが、裏で本作に協力していたことが明らかに。監督、製作、共同脚本を兼任したトッド・フィリップスは、「僕はマーティンを知っていて、誰よりも彼の大ファン。だからエグゼクティブ・プロデューサーをやってもらいたくて、初期の段階で脚本を見せたんだ。でも彼は『アイリッシュマン』が忙しくて、断られてしまった。だが寛大にもプロデューサーのエマ・ティリンジャー・コスコフを紹介してくれたんだ」と明かす。
スコセッシは、本作にも出演しているロバート・デ・ニーロが主演するNetflixオリジナル映画『アイリッシュマン』(11月27日より全世界同時配信)の制作が多忙なことを理由に、本作への参加を断念。しかしニューヨークを代表する名プロデューサーを紹介し、1週間前までスコセッシと共に撮影していたクルーを『ジョーカー』の撮影にあたり借したのだという。ニューヨークでロケーション撮影をした本作にとって、ニューヨークが舞台の作品を数多く手がけてきたコスコフの参加にはフィリップス監督も「ニューヨークでの撮影経験がなかったが、彼女は映画制作においてニューヨークを制覇している。参加してもらえてラッキーでした」と感謝。
さらに「僕らは『アイリッシュマン』の撮影が終わったばかりのクルーに、そのまま来てもらうことができた。僕らが撮影に入るまさに1週間ほど前に『アイリッシュマン』の撮影は終わったばかりだったんだけどね。エマとマーティンのおかげで、僕らはニューヨークで最高のクルーに働いてもらうことができたんだ」と、スコセッシの協力が本作にとって不可欠であったことを告白。
そのスコセッシが本作を断念した理由となった『アイリッシュマン』は、先日第57回ニューヨーク映画祭のオープニング作品として世界初披露され、登場したスコセッシは「とてもワクワクしているよ。46年前、ここで『ミーン・ストリート』のプレミアをしたんだ」と懐かしんでいた。こちらも世界の批評家たちから「スコセッシの最高傑作!」など絶賛の声が絶たず、『ジョーカー』と激しい賞レース争いをすることは明らか。スコセッシが『ジョーカー』に協力したことを後悔する日が来るかも?まずは現在公開中の『ジョーカー』を、ぜひ映画館で堪能してほしい!
文/富塚 沙羅