「とらドラ!」に「あの花」『ここさけ』も!最新作『空青』公開中の長井龍雪作品の魅力をひも解く!
『空の青さを知る人よ』(公開中)は、数々のヒット作を生み出した長井龍雪・岡田麿里・田中将賀のチームによる劇場版アニメ最新作。「とらドラ!」や「あの花」『ここさけ』で知られる3人だが、本作ともリンクする各作品の特徴について、改めて紹介したい。
不器用な2人のまっすぐすぎる恋から目が離せない「とらドラ!」
2008年に放送されたテレビアニメ「とらドラ!」は、竹宮ゆゆこ作のライトノベルが原作で、長井監督の名を世に知らしめる作品となった。男子高校生・竜児と、親友の実乃梨以外とは親しくせず、小柄なのにどう猛なことから「手乗りタイガー」と称される女子高生・大河がそれぞれの恋のために共同戦線を張る…という学園ストーリーだ。
ヒロインはツンデレで学園モノ、一見するとよくある作品に思えるかもしれないが、物語が展開するにつれて大河の心が解けていき、徐々に本音を見せ始めるストーリー構成や、終盤での“結婚式”の演出は多くのファンの感動を呼んだ。
過去の痛みを抱える幼なじみの少年少女を描いた「あの花」
2011年に放送された「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」は、引きこもり生活を送る主人公・仁太の前に、小学生の頃に亡くなった幼なじみ・芽衣子が“幽霊?”となって現れたことから始まる、少し不思議な物語だ。
かつて結成した幼なじみグループ「超平和バスターズ」のメンバーと共に芽衣子を成仏させる方法を模索するうちに、芽衣子が亡くなった当時のエピソードや、それぞれが抱えてきた人間関係の葛藤や嫉妬、後悔などがひも解かれていく。
長井・岡田・田中チームの作品によく登場する埼玉県秩父市が舞台となっており、この作品をきっかけにゆかりのスポットを「聖地巡礼」するファンも多くなった。
高校生のリアルな心情が、会話やしぐさを通して描かれる「ここさけ」
長井・岡田・田中が再集結した『心が叫びたがってるんだ。』(15)。主人公の女子高生・順は小学生の頃に自分の言葉によって両親が離婚してしまった経験から、玉子の妖精に「おしゃべり」を封印され、言葉を発するととてつもない腹痛に襲われ話すことができない。そのためクラスでも町内でも浮いた存在だったが、クラスメートの拓実らと共に地域交流会の実行委員に指名され、クラスでミュージカルを演じることに。歌なら自分の思いを乗せて伝えられることに気づき、同級生とも少しずつ打ち解けていくなかで拓実への思いが芽生え始める。
岡田麿里が脚本を手掛けた作品の随所に見られる、少年少女の生々しいやりとりや時に残酷とも取れる考え方は、本作にも頻出する。ケガで野球部エースの座を追われた田崎や、中学時代に自然消滅した拓実との関係にとらわれる菜月の心情は、主人公である順や拓実にも負けないくらい高校生らしく、リアルに描かれている。
また、ミュージカルを演じるというストーリー上、歌や音楽を奏でるシーンも多い。既存の音楽にオリジナルの歌詞をつけた楽曲たちにも、ぜひ耳を傾けてほしい。
姉妹とその初恋相手の交流が強く心を揺さぶる『空の青さを知る人よ』
長井・岡田の作品は、時に気恥ずかしくなるほどストレートな言葉のやり取りや、胸をえぐられるようなエピソードなど、観る人の心を強く揺さぶるストーリーが何よりの魅力だ。また、田中の生み出すキャラクターが、ともすれば暗さを感じさせるドラマティックな作品の世界をいきいきと明るく彩っている。
『空の青さを知る人よ』は、2人暮らしの姉妹を主軸に、姉・あかねと元恋人の慎之介、さらに妹・あおいと、なぜか高校生のままの慎之介(しんの)の交流を描いた作品。それぞれが過去に残してきた後悔や罪悪感、姉妹愛や家族愛、恋や友情が様々なキャラクターの視点から切り取られ、ここでもまた3人のもつ魅力が存分に発揮されている。
文/藤堂真衣
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