『ザ・ライト』のアンソニー・ホプキンス「役を演じるのに何も難しいことはない」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『ザ・ライト』のアンソニー・ホプキンス「役を演じるのに何も難しいことはない」

インタビュー

『ザ・ライト』のアンソニー・ホプキンス「役を演じるのに何も難しいことはない」

東日本大震災の影響で公開延期となっていた『ザ・ライト エクソシストの真実』の4月9日(土)公開が正式に決まった。そこでルーカス神父を演じた大御所アンソニー・ホプキンスのインタビューをお届けする。

――ルーカス神父について教えてください

「ルーカスはローマンカソリックのイエズス会の神父だ。彼はエクソシズムの腕に長けている。実在した人に基づくキャラクターだ。そして、コリン・オドノヒューが演じる若い神父がいる。彼はエクソシズムについて学ぶためにやって来るが、悪魔の存在を信じていない。彼のキャラクターは僕のキャラクターに向かって『彼女には神父じゃなくて精神科医が必要ですよ』と言ったりする。僕が演じるルーカスは実在の人物に基づいているが、現場にはゲイリー・トーマスがいてくれた。彼はエクソシズムを行うイエズス会の神父だ。アドバイザーである彼に『悪魔は人間のような姿と性質を持っていると思いますか?』と聞くと、彼は『イエス』と言った。僕は驚き『じゃあ、どんな外見をしているんでしょう?』と尋ねてみた。彼は『目に見えるものじゃなく、存在する知性です』と言った。僕が『そうですか』と言うと、『あなたはどう思いますか?』と聞いてくるので、僕は『自分がどう思うかわかりません。僕は何でも信じます』と答えたよ。なぜなら、もしカトリック信者に神はどんな外見なのかと聞いたら、カトリックの子供ならきっとサンタクロースみたいな外見をしていると言うだろう。でもそれは人間が神人同形と決めつけているにすぎない。それが何なのか誰にもわからないんだ。誰にも見ることはできない。でもそれはどこにでもいる。このテーブルの上にもいる。あなたの中にも、僕の中にもいる。神は僕らの中にいる。僕ら自身はただの星屑だ。宇宙爆発起源論によると、130億年だかそれくらい前に宇宙で大きな爆発が起こり、僕らはそこから生まれた。そして今も僕らはここにいる。僕はかつて無神論者だったが、今は違うとみんなに言う。そうすると人は『あなたは何を信じるのですか?』と聞いてくる。僕は『生きていることの奇跡かな』と言う。僕らが知る限り、自分たちはやがて死ぬと知っている動物は人間だけだ。犬や猫は自分を守るための本能は持っているが、合理的な考え方はしない。僕らが持つ特有の知性、知識、賢明さを説明することはできない。人はナイフ(テーブルの上にあった)を作ったり、コンピュータを作ったりすることができる。アインシュタインもガンジーも、いわば神みたいな存在だ。アインシュタインや、特にダーウィンはイギリス正教会の信者で、熱心なプロテスタントだった。だけど彼らは神が我々を見守っているとは信じていなかった。津波が来た時、多くの人は『どうして神はこんなことをするんだ?』と言った。だが、それは道徳上の神とは何の関係もない。地震が起きて人が死ぬのは、地盤が動くからであって、道徳上の選択とは関係がない。我々人間はどうすれば安全に生きられる保証を得られるのか考える。でも保証なんかない。何年も何年も前に、ローマでヨハネ23世は苦しみながら死んだ。でも同じ日にニューヨークでは大勢の人を殺したギャングが85歳で安らかに死んでいったかもしれない。そこに正義なんかないんだよ」

――今回の役を演じるに当たり、最も気を遣った点、また難しかった点を教えてください

「何もない。ただの仕事だ。難しいことなんて何もない。ただセリフを覚えるだけだ」

――どういう役を演じるのが好きですか?

「特にないよ。僕は作曲もするし、ピアノも弾く。絵も描く。演技は仕事だ。公の立場にいるということを除けば、世の中のどんな仕事と何ら変わらない。うまく行けば行くし、行かない時は行かない。良い映画になるだろうかと心配したりもしない。自分のベストを尽くすのみだ。現場にやって来て、セリフを覚えて、ギャラをもらう。それに心を支配されることはないし、僕にとって重要なことではない。なぜならみんないつか死ぬんだから。そしてまた一からスタートする。先週、メキシコに行ったんだが、そこで若いジャーナリストに『どうしてこの役を選んだのですか?どうしてこの映画をやりたかったんですか?』と聞かれたので、僕は『わからない』と言った。そして『あ、ちょっと待って。どうしてこれをやったのかって聞いたんだよね?金だよ』と付け加えた(笑)。彼らは『お金?』と驚いた。僕は『良いギャラをオファーしてくれたんだ。他にどんな理由が必要かい?』と言ったよ。そのおかげで浮浪者にならずに済むし、外出するきっかけをくれるんだ。それでも『それだけですか?』と言うので、僕は『そうだ』と答えた。彼らは僕のことを『奇妙だ。でも格好良い』と言った。そこで僕はT.S.エリオットの言葉を引用した。“私は自分のすごさが揺れ動く瞬間を見た。そして不滅の従者が僕のコートを受け取っていななくのを見た。私は死につつあったのだ”。シェイクスピアを読んでみると良い。全ては無、死についてなんだ。ユングは『自分がいつかは死ぬことを受け入れると、人生はもっと豊かになる』と言った。僕らはいつも死から逃れようとしている。僕らは心の中で常にそれを恐れている。それが最大の恐怖なんだ。だから人は金持ちになろう、有名になろうとするし、そのせいでカダフィが権力を握り続けることができてきたんだ。彼は自分は死なないと思っている狂った男だ。『これで終わりだ』と悟って、人々を幸せにしてあげれば良いのに。ヒトラーがそうだったように、自分はパワフルだと信じている。彼らは愚か者。無知の愚か者。だからヒトラーは自分の頭を撃つことになった。彼らは馬鹿だよ。1,800万人の人を犠牲にしたんだ」

――今回の監督との仕事はどうでしたか?彼とキャラクターについて話しましたか?

「良かったよ。話しはしていない。『おはようございます』と言ってコーヒーを飲んで『準備はできてますか』と聞かれ、『できてます』と言って、『アクション』と言われて『カット』と言われた。そしてランチ休憩があった。それだけだ。何も重要なことじゃない。君に対して『どうやって書くんですか』と言うのと同じだ。単純なことだよ」

御年73歳、圧巻の貫禄だ。その発言は卓越した演技力に裏付けされている。本作は彼の演技だけでも必見である。日本公開次作は『マイティ・ソー』(7月2日公開)で主人公ソーの父親を演じる。こちらも楽しみに待ちたい。【Movie Walker】

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