ベルリンでダブル受賞の快挙!『37セカンズ』監督&キャストが作品に込めた熱い想いを語る

イベント

ベルリンでダブル受賞の快挙!『37セカンズ』監督&キャストが作品に込めた熱い想いを語る

現在開催中の第32回東京国際映画祭で29日、第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門でパノラマ観客賞と国際アートシネマ連盟賞のダブル受賞を果たした『37セカンズ』(2020年2月公開)の上映と舞台挨拶が行われ、主演を務めた佳山明と、神野三鈴、大東駿介、メガホンをとったHIKARI監督が登壇した。

本作の主人公は、生まれた時に37秒間呼吸が止まっていたことが原因で、手足が自由に動かせない脳性麻痺となった23歳の貴田ユマ。親友の漫画家のゴーストライターとして働き、シングルマザーで異常なまでに過保護な母の恭子との生活に息苦しさを感じていたユマは、ある出会いをきっかけに自らの力で“新しい世界”を切り開いていくことに…。

本作が長編初監督作品となったHIKARI監督は「たくさんの方との出会いがきっかけ」と、本作のスタートについて語る。「一番最初は4、5年前。障がい者と性というお話を聞きまして、その流れで個人的にインタビューを始めました」と振り返り、「元々は下半身付随の女性の物語で脚本を書いていました。女優さんが車椅子に乗って演じるのでは私が作る意味がないと思ったので、実際に体に障がいを持っている方と映画を作ることが第一だと思い、オーディションをさせていただきました」と明かした。

そのオーディションによって主役に抜擢された佳山は、本作が演技初挑戦。応募した動機を聞かれると、少しはにかんだ表情を浮かべながら「うまく言葉にしきれないんですけど、いま思うと、なにか見えてくるものがあったらいいなと思って応募しました」と、劇中のユマさながらに“新しい世界”に自ら挑んだことを告白。そんな佳山を、女優の先輩である神野は「本当に賢くてチャーミングな女性」と絶賛。母娘役を演じるために撮影前に生活を共にしたという2人は、舞台挨拶中も仲睦まじい様子を見せていた。

また大東は、HIKARI監督から電話で出演の依頼を受けた際のエピソードを語る。「子どものころに家の近くに障がい者センターがあって、障がいを持った方と触れ合うことが多かった。大人になっていくなかで、自分や他人の心にある目に見えない“心の障がい”が恐ろしいと感じていて、いつかそれを作品で確かめたい、深く知っていきたいと考えてた時だったので、是非やらせてくださいと答えました」と明かし、「自分の中で運命的な出会いだった」と力強く語った。

そして舞台挨拶の後半では観客からの質疑応答が行われ、前日に行われたレッドカーペットのLINE LIVEの際にキャストが語っていた「監督の愛がすごかった」というエピソードについての質問が。それについて佳山は「うまくお答えできませんけど、HIKARI監督はすごく情熱的で温かさを持った方」と表現。神野も「作品を観ていただけたら、監督の人や世界に対する想いを感じていただけると思います」と、HIKARI監督の熱い想いが作品にも反映されていることをのぞかせていた。

取材・文/久保田 和馬


映画の祭典が今年も始まる!特集・第32回東京国際映画祭
第32回東京国際映画祭をフィーチャー。映画の祭典にまつわる記事をまとめ読み!

作品情報へ