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「全身全霊で映画作家」犬童一心と高橋栄樹が大林宣彦監督のバイタリティに敬服

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「全身全霊で映画作家」犬童一心と高橋栄樹が大林宣彦監督のバイタリティに敬服

11月5日(火)まで開催されている第32回東京国際映画祭で1日、特別上映作品「WOWOWオリジナルドキュメンタリー ノンフィクションW『大林宣彦&恭子の成城物語[完全版]〜夫婦で歩んだ60年の映画作り〜』」の上映とQ&Aが行われ、企画・構成を務めた犬童一心と演出・撮影を務めた高橋栄樹が登壇した。

『HOUSE ハウス』(77)で商業デビューを果たして以来、“尾道3部作”など40作以上の作品を手掛けてきた日本映画界のレジェンド・大林宣彦監督。本作では過去の映像や仲間たちの証言を織り交ぜながら、大林監督が自主映画の制作をはじめた青春時代から、恭子夫人と過ごす日々、そしてガンによる余命宣告を受けながらも強い精神力で病を乗り越えて作り出した最新作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』(2020年公開)の撮影に挑む様子まで、映画作りにかける熱い想いを紐解いていく。

「僕がPFFで入選したときの審査員が大林さんで、10代の頃から知っていましたが、大林さんを撮ろうという気はなかった」と明かす犬童は、「高橋さんが大林さんを撮りたいと言っていたのですが、いま大林さんを撮っても反戦の映画作家というわかりやすい視点で語られることが多い。でも僕が撮るなら恭子さんの話だなと思ったんです」と、世間で持たれているイメージとはまったく異なる視点で大林監督を描いた理由を告白。

ともに8ミリフィルムの時代から映画を作ってきた犬童と高橋。「年代的にも、大林さんは指針でありパイオニア。一人で尾道からやってきて、8ミリからCMを経て映画界に入り、自分のプロダクションで映画を作ってきた」と、大林監督への敬意をのぞかせた犬童は「80分くらいしかない作品ですが、同じ内容を大林さんから聞いたら1週間かかります」と笑いを誘う。すると高橋は「いつも監督がひとりで蕩々とお話しをされるんですが、恭子さんがお話しされると聞き手に回る。その掛け合いもなかなか見ることができない姿だと思いました」と語った。

その後の質疑応答で、今回のドキュメンタリーのために大林夫妻に密着したことで、驚かされたことや気付かされたことは?と訊かれると、犬童は「長いスパン一緒にいて思ったことは、本当に想像以上に全身全霊で映画作家ということ」と、大林監督は体調が優れないときでも集中力と緊張感を途切れさせることなく編集作業などをして映画と向き合っていたことを明かす。

また劇中では大林監督が体調を崩して寝込むシーンがあるが、それについて高橋は「皆さんと一緒に介抱をさせていただいていました。カメラ回せるはずないよなと思っていたら、恭子夫人から『宣彦がカメラ回したほうがいいって言うからおいでよ』と言われました。そういう瞬間でも映画作家であり続ける。しかも、あの後編集に戻られていましたから、そのバイタリティや執念は見たことがない」と目を丸くしながら振り返った。

「WOWOWオリジナルドキュメンタリー ノンフィクションW『大林宣彦&恭子の成城物語[完全版]〜夫婦で歩んだ60年の映画作り〜』」は11月17日(日)午前10時よりWOWOWにて放送される。

取材・文/久保田 和馬


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