大林宣彦監督が東京国際映画祭の特別功労賞を受賞!「あと2000年、3000年は作ると約束します」
11月5日(火)まで開催されている第32回東京国際映画祭で1日、「JapanNow」部門に選出されている『海辺の映画館-キネマの玉手箱』(2020年4月公開)のワールド・プレミア上映が行われ、上映前に贈呈式と舞台挨拶、Q&Aが開催。「第32回東京国際映画祭 特別功労賞」を受賞した大林宣彦監督に、常盤貴子が花束を贈呈した。
『花筐/HANAGATAMI』(17)の撮影直前に余命宣告を受けた大林監督が、20年ぶりに故郷・尾道を舞台に撮りあげた本作。映画館の閉館オールナイト上映に駆けつけた3人の青年は、突然上映中の映画の世界へとタイムリープしてしまう。のどかな江戸時代から乱世の幕末、戊辰戦争、日中戦争、太平洋戦争と、目まぐるしい流血の歴史が語られていく中で、次々と無垢な人たちの死を目の当たりにしていく3人。そして移動演劇「桜隊」のメンバーとして合流した彼らは、昭和20年8月6日の広島へ向かうことに。
『野のなななのか』(14)と『花筐/HANAGATAMI』、そして最新作にも出演するなど、近年の大林作品の常連である常盤から花束を受け取った、大林監督は満面の笑顔を浮かべると「今日は文化に関する貴重な功労賞というものをきちんといただきました。どうもありがとうございます」とコメント。超満員の会場は大喝采に包まれた。その後、本作に出演した厚木拓郎、細山田隆人、細田善彦、吉田玲、山崎紘菜も登壇し舞台挨拶がスタート。
大林監督が前回尾道を舞台にした『あの、夏の日 とんでろ じいちゃん』(99)でデビューした厚木は「20年ぶりに同じ場所で同じスタッフの皆さんと、20年前にもお会いした人もいまして、20年ぶりにある意味で役のつづきというものも演じさせてもらって、なかなか他ではできない。こういう作品ですから第一印象はひとりひとり違うと思うので、そのままを観ていない人に伝えて、より多くの人に作品を知ってもらって深めてもらう良い機会だと思っています」と語る。
一方、細山田は「この機会にご自身でいろいろ考えていただいて、映画の力を信じて、いろんな人に伝えていただきたい」と呼びかけ、初めて大林組に参加した細田は「僕はこの中で一番、映画を通して成長した人間だと思います。皆さんがこの映画を体感したことで、僕が演じた役と同じように未来について考えてくださったら嬉しいです」とコメント。
すると大林監督は「“映画は学校”と言いまして、本当にいろんなことを学ぶんです。拓郎くんは私の映画でデビューをして、その後に淀川長治さんを演って、私自身を演じています。細田くんもよく成長してくれたね。映画は他人事ではなくすべて自分事になる。お客さんが自分と体を入れ替えて劇に感動してくださることで、人生のなにかをそれぞれが学ぶことができる」と、“校長”としての立場で俳優たちにねぎらいの言葉をかける。
そしてQ&Aでは、観客から「監督は可能な限り映画を作ることを考えているのでしょうか?」という質問が。「はい」と即答した大林監督は「未来のことは誰にもわかりませんから、あと2000年、3000年は作ると約束します。そうでないと、私が映画を作っている意味がないと思っています。あの戦争を知っている私が、知らない若い人のために“映画の学校”でハラハラドキドキ、ワクワクする感動的な物語を作り出してお見せしたいと思うわけでございます」と意気込み、「私たち観客が何かをしないと世界はよくならない。私たち観客が世界を幸せにする力を持っている。それが映画の自由な尊さです。自由を守るのは難しいことですがやり遂げなければなりません。映画は素晴らしい!」と力強く語った。
取材・文/久保田 和馬