アリシア・ヴィキャンデル、EXILEの小林直己と共演「EXILEのビデオはたくさん観たの」
Netflixの映画『アースクエイクバード』(11月8日公開、11月15日より全世界同時配信中)で、主演を務めたオスカー女優のアリシア・ヴィキャンデル。東京と新潟県の佐渡島でロケを敢行した本作では、EXILEのパフォーマーで、三代⽬ J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのリーダー兼パフォーマーであり、俳優の小林直己と共演した。来日したアリシアに、日本でのロケの感想や、小林との撮影秘話を聞いた。
日本に住むイギリス人女性ルーシー(アリシア・ヴィキャンデル)に、彼女の友人リリー(ライリー・キーオ)の殺人容疑がかけられる。2人には、共通の友人である日本人カメラマン禎司(小林直己)が関わっていて、その複雑な三角関係が明かされていく。原作は、日本在住経験のあるイギリス人作家、スザンヌ・ジョーンズの同名ミステリー小説で、製作総指揮は「エイリアン」シリーズの巨匠、リドリー・スコットが務めた。
「父が村上春樹さんの大ファンで、私も村上さんの本はすべて読んできた」
先日開催された第32回東京国際映画祭の特別招待作品でもあった本作。舞台挨拶でアリシアは「もともと日本が大好き」と親日ぶりをアピールしていたが、それはただのリップサービスではない。
「父が村上春樹さんの大ファンで、私も小さいころから、村上さんの本はすべて読んできたの。そこから日本のことが好きになり、いつか日本に来てみたいと思っていて、前回の来日でその夢が叶った。実は、今回のロケ中に、父も日本に来ていたのよ」。
本作では、イギリス人であるヒロイン、ルーシーの目線を通して、日本の文化や習わしが描かれていく。では、スウェーデン出身のアリシアが、来日して驚いたのはどういう点だったのか?
「あちこちに自販機がたくさん置かれていること。でも、ゴミ箱がほとんど見当たらないこと。トイレの便座が温かいことなど、違いはたくさんあった。ただ、今回はロケで長く滞在していたので、共通点もたくさん見えてきたりもして。例えば、スウェーデンでも生の魚を食べるし、家では靴を脱いで生活するの。漬物と同じようにピクルスをよく食べるし、行列に並ぶのも好き(笑)」。
アリシア演じるルーシーが、音を出さずにそばを食べていたのが印象的だったが「私は日本人がそばを食べる時、すする音を立てるのは知っていたの。実はロケでも、時々音を立てて食べたりもしていたけど、実際に本編で使われたのが、音を立てていなかったバージョンだった」と、教えてくれた。
「もともとダンスが得意だから、下手に踊ることがとても難しかった」
本作で、一番共演シーンが多かったのが、禎司役の小林だ。彼と共演するにあたり「EXILEのビデオはたくさん観ておいた」と言うアリシア。やはり2人でダンスを踊るシーンが一番印象深かったと言う。
「禎司がルーシーに、当時流行っていたダンスを踊って見せてくれるシーンよ。2人の深いつながりが感じられる重要な場面ね。そこで私は、不慣れな感じで一緒に踊らなければいけなかったけど、もともとダンスが得意だから、下手に踊ることがとても難しかった」。
もともとバレリーナを目指していたというアリシア。その身体能力の高さは『トゥームレイダー ファースト・ミッション』(18)などでも実証済みだ。そういった意味で、パフォーマーの小林とは、相通ずるものがあったのではないだろうか。
「私は役に入る時、台詞ではなく、まずは身体的な動きからキャラクターのエッセンスを見つけようとするの。直己さんも、もしかするとそういうところがあったのかもしれない。現場では2人で意気投合できたから」。
ルーシー役では、深い心の傷を繊細に演じることも求められた。ルーシーは、自分に関わった人たちが次々と死んでいくことが、ある種のトラウマとなっている。
「私はルーシーほどの喪失感やトラウマを抱えたことはない。でも、そういう役柄を演じる時は、自分がしてきた経験だけではなく、いままで見てきたり、周りの人から聞いたことや調べたことを取り入れつつ、自分で空想を巡らせて演じるようにしているの。また、ほかの俳優さんと一緒に感情を探っていくこともある。でも、一番大事なことは、自分がちゃんと人生を生きていることだと思っている。経験値によって、そういう引きだしが増えていくから。実際に私自身なら、通常言わないような台詞も、役としてなら言うことができる。だから、私は役を演じるうえで、たくさんのことを学んでいるの」。
アリシア演じるルーシーが、様々な葛藤を経て、最終的にどういう境地にたどり着くのかは、観てのお楽しみだ。
「自分がどんなに罪悪感を抱えていても、違う見方をすれば、見当違いに思えることもあるんじゃないかと私は思う。ルーシーのように、自分の思っていることを誰かと共有して、他人の意見を聞くことにより、自分は1人じゃないと気づくことがとても大事ね。この映画は観たあとに、そういういろいろな意見が出るオープンな映画だと思う。ぜひ幅広い人たちに観ていただきたい」。
取材・文/山崎 伸子