宮崎駿、日本は「自然に恵まれた国。より美しくある甲斐がある国」と前向きな姿勢を見せる
東京オリンピックを目前に控えた1963年を描く、スタジオジブリの最新作『コクリコ坂から』(7月16日公開)の主題歌発表会見が3月28日、スタジオジブリで行われ、宮崎吾朗監督、主題歌を担当する手嶌葵、企画・脚本の宮崎駿、主題歌の作詞をした万里村ゆき子、主題歌の作曲をした坂田晃一、主題歌の編曲や本作の音楽担当の武部聡志が出席した。
3月11日に起こった東日本大震災を受け、宮崎駿は「今も埋葬もできないまま、国土の一部を失いつつある国で、私たちはアニメーションを作っているという自覚を持っています。文明と向き合う模索を始めなければならない時期になったが、文明論を語る時期ではない」と断言し、「映画が多くの人たちの支えになってくれたら」と映画を通じて、復興復旧の力になれるよう祈った。宮崎駿の長男・宮崎吾朗監督は「震災から約2週間が経ち、自分たちがこうして映画を作っていられるそのものこそが、自分たちを支えてくれているんだと感じる」と、地震を通じて、映画の存在の大きさを実感したようだ。現在の被災状況について、宮崎駿は「日本は地震と火山と台風と津波に襲われてきた。自然に恵まれた国。こんなことがあっても、より美しくある甲斐がある国」と、前向きな姿勢を見せた。
本作の原作は1980年1月から8月号まで連載された高橋千鶴(作画)、佐山哲郎(原作)の少女漫画。当時は少女漫画「なかよし」に連載されており、宮崎駿は「今は自分たちが作ってきたファンタジーを作る時期ではない。ファンタジーがあまりにも多く作られて、ゲーム化してしまったから我々がゲームを作る必要はなかろうかと」と、今作の企画意図を明かした。『ゲド戦記』(06)以来、2作目のジブリ主題歌を担当する手嶌は、「自分にとって素敵なことが2回あるということは、本当に幸せなこと」と喜んだが、「被災地の方々にどう言葉をかけたらいいのか、まだ自分でもよくわかっていないのですが、一緒に手を握り合って前に進んでいけたら良いなと思います」と、声を詰まらせながらコメントし、涙を見せた。
宮崎駿は「あまり好きではない」と明かした今作のコピーを「上を向いて歩こう」は、鈴木敏夫プロデューサー発となり、「個人的に(坂本)九ちゃんの大ファンで、彼の代表曲と言ったら『上を向いて歩こう』だろうと。今、携帯で下見たりして、みんな下を向いているじゃないですか。下を向いているとろくなことはないし、前に進むのもしんどい、だけど後ろに後ずさりしたくない。上を見れば良いこと起こるんじゃないかなとふと思ったんです」と明るく話した。本作の進行状況については、「シナリオが遅れましたが、絵コンテの作業も遅れ、そのシワ寄せが来ている。非常に厳しい局面に立たされている」と苦悩を明かすも、「何とかやります!」とスケジュール通りの完成、公開を目指すことを宣言した。【Movie Walker】