『SOMEWHERE』ソフィア・コッポラ監督とスティーブン・ドーフが語る「家族とは?」
『マリー・アントワネット』(06)のソフィア・コッポラ4年ぶりの監督作『SOMEWHERE』(4月2日公開)で、監督と主演のスティーブン・ドーフが来日。ソフィア自身の体験も織り込んだ、父と娘の物語となった本作で、スティーブンはセレブ生活を送る俳優の父親役に扮した。そこでふたりにインタビューし、本作への思い入れを語ってもらった。
ハリウッドのホテル、シャトー・マーモントで退廃的な生活を送る俳優ジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)の元に、前妻と暮らす11歳の娘クレオ(エル・ファニング)がやって来る。ジョニーはクレオと過ごすうちに自分の今の人生を見つめ直す。
まずはソフィアに、第67回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した感想から聞かせてもらった。「光栄だし、ありがたいことよ。ワールドプレミアで初めてご覧いただき、評価してもらったわけだから。とても権威のある賞なので、それに伴って多くの人々が映画を見てくれると嬉しいわ」。
コッポラ監督とスティーブンは以前から知り合いだったそうだが、本作で仕事をしてみて、どんな印象を受けたのだろうか。ソフィアは「これだけ長い期間、彼と一緒に過ごしたことは今までなかったので、いろんな発見があったわ。スティーブンはとても努力家だと思ったの。真面目に仕事に打ち込むハードワーカーね」とスティーブンを賛辞すると、彼も監督との仕事はとても素晴らしかったと語る。「僕はこれまでの人生では常に幸運に恵まれ、才能ある方々とたくさん仕事をしてきたけど、ソフィアとの仕事は本当に素晴らしい体験だった。他の監督との仕事とはちょっと違っていて、すごくリラックスした、親密さにあふれた現場だった。映画を作ってる感じさえしなかったくらいだ。本当に自分にとっては特別な一本となったよ。できればこういう映画にまた巡り会いたいけど、なかなかできないからね」。
『SOMEWHERE』はソフィアにとって自身の思い出を投入した作品であり、さらに製作総指揮にソフィアの父フランシス・フォード・コッポラが、製作を兄のローマン・コッポラが務めた面からしても、実にパーソナルな映画である。では、ふたりにとっての家族とは? まずはソフィアが本作のテーマを交えて語ってくれた。「本作では、娘の面倒を見なければいけない父親としての世界と、彼のキャリア上の世界、すなわち楽しいけど表面上だけの付き合いをしている世界を、コントラストを持って描いたの。そういう視点から見ると、我々にとって家族とは、ちゃんと足を地につけて現実的に生きることを教えてくれる存在だと思う。私にとっても家族はとても大切よ」。
スティーブンも家族は最も大事な存在だと言う。「自分は素敵な家族に恵まれてきた。若い頃、クレイジーにならなかったのは、彼らが守ってくれたからだと思っている。ジョニーも、最終的には自分にとって一番重要なものは家族で、娘と一緒に過ごす時間が何よりも大切なんだと気づいていく。真に大切なもの、それが家族だと思うよ」。
ソフィアが脚本を手がけ、スティーブン・ドーフのダメな父親と、エル・ファニング扮する愛らしい娘が体現した家族の物語は、優しさと切なさ、そしてほろ苦さが入り交じり、見終わった後、爽やかな余韻を残す。ソフィア自身が家族と共に撮り上げたスペシャルフィルムだけに、描かれた家族愛も実に生々しくてリアルだ。本作は大切な人と一緒に観賞したい一作である。【Movie Walker/山崎伸子】