映画監督の登竜門「第40回New Directors New Films festival」大盛況のうちに閉幕

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映画監督の登竜門「第40回New Directors New Films festival」大盛況のうちに閉幕

映画監督の登竜門ともいうべき第40回New Directors New Films festivalが、3月23日から4月3日まで、ニューヨーク近代美術館(MOMA)の劇場で開催され、大盛況のうちに幕を閉じた。アートの街、ニューヨークを代表するMOMAと、毎年アカデミー賞にノミネートされることが確実視されている秀作を出展することでも有名なニューヨーク映画祭の主催元であるリンカーン・センター・フィルムソサイエティが合同で主催するこの映画祭は、文字通り各国の新人監督による新作のお披露目の場だ。そのため一般人にとっては無名に近い監督の作品が上映されるわけだが、過去の出展作品を見る限り、同映画祭から一躍有名になった監督も多く、芸術性と質の高い作品を出展する映画祭として、映画関係者や一般人からも注目を集めている。

たとえば、同映画祭に出展された『続・激突! カージャック』(74)で初長編映画の監督デビューを果たして注目を集めたスティーブン・スピルバーグ監督は、翌年に『ジョーズ』(75)を製作して一躍スターダムにのし上がり、その後の活躍は特筆するまでもない。また、スペイン人のペドロ・アルモドバル監督が、アメリカで知名度を広めることになったのも同映画祭で『グロリアの憂鬱』(84)が上映されてから。監督本人が同映画祭に感謝の意を表すコメントを出しているほどだ。

また、ダーレン・アロノフスキー監督の『π パイ』(97)、スパイク・リー監督の『ジョーズ・バーバー・ショップ』(87)、ギルレモ・デル・トロ監督の『 クロノス』(98)、日本でも絶大な人気を誇るウォン・カーウェイ監督の『欲望の翼』(92)、ヴィム・ベンダース監督の『ゴールキーパーの不安』(71、日本未公開)、ラッセ・ハルストルム監督の『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(88)、ウォルフガング・ペーターゼン監督を世界的に有名にした『The Consequences』(77、日本未公開)も同映画祭で上映され、ペーターゼン監督は『U・ボート』(82)で大ブレークを果たした。

最近では初監督作でアカデミー賞のオリジナル脚本賞及び主演女優賞(メリッサ・レオ)にノミネートされたコートニー・ハント監督の『フローズン・リバー』(10)など、世界各国からカンヌ国際映画祭やヴェネチア国際映画祭の常連となる監督やアカデミー監督を多数生み出している。

今年は40周年ということもあって、例年になく秀作がそろったと評判だったが、なかでもオープニングを飾ったJC・チャンドール監督の『Margin Call』は、新人にもかかわらず、主演にケビン・スペイシーを迎え、ジェレミー・アイアンズ、スタンリー・トゥッチ、デミ・ムーアなど豪華キャストをそろえ、鋭い視点で金融業界の内幕を描いた力作で早くもメディアから熱い視線を受けている。

また日本からは、第23回東京国際映画祭の日本映画・ある視点部門で作品賞を受賞した深田晃司監督作『歓待』(10)(英語タイトル『Hospitalite』)もエントリーされており、今年も同映画祭からフランス、ドイツ、カナダ、ノルウェイ、トルコ、イスラエル、中国など、国境を越えて明日の映画界を担う監督が誕生することは間違いないだろう。【NY在住/JUNKO】

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