少年役で共演!佐倉綾音&釘宮理恵インタビュー「理恵さんは私の声優人生においての指標」
2018年1月から2019年6月まで放送された人気テレビアニメの劇場版『新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』(公開中)で、声優の佐倉綾音と釘宮理恵が“男の子役”で共演を果たした。テレビアニメに引き続き佐倉が主人公の速杉ハヤトを演じ、釘宮は少年ホクト役として劇場版からの参加となるが、佐倉は「理恵さんは、私の声優人生においての指標なんです」と、いつも背中を追いかけている憧れの存在だと告白。“男の子役”へのアプローチに対しても意見が一致する彼女たちに、2人の関係性や声優業への想いなどを、たっぷりと語り合ってもらった。
「新幹線変形ロボ シンカリオン」は、実在する新幹線が変形するロボット“シンカリオン”が活躍する世界を舞台に、シンカリオンと高い適合率を持つ子どもたちが運転士となり、強大な敵に立ち向かう姿を描いたテレビアニメ。初の劇場版となる本作では、次世代新幹線開発のためのJR東日本の試験車両「ALFA-X」が早くもシンカリオンとして登場し、主人公のハヤトたちが新たな戦いに挑む。
「理恵さんが演じてくれたらいいのにと思っていた」(佐倉)「呼び寄せられましたね」(釘宮)
佐倉が演じるハヤトは、新幹線が大好きで、新幹線の運転士になることを夢見る小学6年生の少年。これまで、新幹線が変形するロボット「シンカリオン」の運転士となり、仲間たちと共に成長を遂げてきた。劇場版では、宇宙からやって来た敵の攻撃を受けるなか、ハヤトの父親、ホクトが突然行方不明になってしまう。そこに現れる、時空を超えてやってきた“9歳のホクト”を演じるのが釘宮だ。
劇場版の制作が決まり、佐倉は「以前から劇場版をやってほしいなと思っていましたし、実際に決まった時は本当にうれしかったです。同時に身が引き締まる思いもしました」と感無量の面持ちを見せる。憧れの先輩である釘宮と、“男の子役”での共演が実現。“親子”でもある間柄を演じることになったが、佐倉は「実は“9歳のホクト”のビジュアルを見た時から、『理恵さんが演じてくれたらいいのに!』と思っていたんです。私のなかで『劇場版のスペシャルなキャラクターは理恵さんがいい…』という想いもあって。『理恵さんに決まった』と聞いた時は、『本当に!?』とものすごく大きな声が出たのを覚えています(笑)」と願いが叶ったことに感激しきり。
それを聞いた釘宮は「呼び寄せられましたね」と一言。佐倉も「強く願えば叶うんだなと思った」と楽しそうに笑いながら、顔を見合わせる。釘宮は「『シンカリオン』に参加できるということで、ワクワクしていました」と今回の初参戦に喜びのコメント。“大人ホクト”は杉田智和が演じているが、釘宮と杉田はアニメ「銀魂」で長年、共演してきた間柄。「杉田くんの子ども時代を演じるとわかった時は、『あんなイケメンの声、出ない!無理だ!』と思いました」と心配したそうだが、「でも9歳のホクトは、ハヤトの妹のハルカに似ている存在として描かれていたので、ホッとして。口癖などもハルカと似ているので、そこに注目していました」と語る。
「理恵さんとたくさん話がしたい!」(佐倉)、「綾音はいつもすごいエネルギーをくれる」(釘宮)
同じ空間でアフレコに臨んだ2人。ハヤトと少年ホクトとして共演した時間は、どのようなものだっただろうか。佐倉は「少年ホクトは警戒心が強くて、なかなか心を開いてくれないんです。でも、ハヤトはそれを意に介することなく、ホクトの心をこじ開けようとする。突っぱねられれば、突っぱねられるほど、ホクトがかわいくて!『なつかせたい、なついてほしい…!』と思っていました」とホクトに愛情たっぷり。
釘宮は「あはは!そんなふうに思ってくれていたんだ!」と笑顔をこぼし、「ホクトは突然時空を移動して、ハヤトの生きている時代にやってきた男の子。なにが起きたかわからない状態でいるんです。でも、どれだけホクトが心にバリアを作っても、ハヤトは優しさと明るさでその壁を壊しにきてくれる。次第にホクトの心が変化していくという様子をスタッフの方がとても細やかに演出してくださって、丁寧に演じていきました」と振り返る。
お互いに刺激を受けることもあったそうで、釘宮は「綾音は、いつもすごいエネルギーをくれるんです。そしてどんなことを聞いても、いつも熱心に答えてくれる。こうやって取材を受けていても、しっかりと考えを伝えようとしているので、すごいなと思います」とニッコリ。佐倉は「そんな!」と恐縮しながら、「理恵さんは台本の読み込みや、作品への理解度がすごく深いので、背筋を伸ばさなければと思っていました。もし『シンカリオン』について理恵さんになにか聞かれたら、ちゃんと答えられるようにしようと思ったりもして…。なんだか私、現場に理恵さんがいると、うれしくて話したくなっちゃうんです。そんなところは、ちょっとハヤトのホクトへの想いと似ているかも」と釘宮のことが大好きで仕方ないといった様子だ。
「ハヤトを“男の子”というより、ひとりの人間として演じています」(佐倉)「演じるキャラクターが男の子か、女の子はそんなに重要じゃない」(釘宮)
小学生のハヤトとホクトを生き生きと表現している2人。男の子役を演じるうえで大事にしていることはあるのだろうか。男の子役にも定評がある釘宮だが、「私はそのキャラクターが、男の子なのか、女の子なのかって、そんなに重要じゃないと思っていて」と口火を切り、「青年の役だとまた違うんですが、小学生くらいまでは男女差などはあまり考えていません。それよりも、脚本をしっかりと読み込んで、演技に集中することが大事で。そのキャラクターがどういうことを考えて発言したり、アクションを起こしたりしているのかを感じることが大事だと思っています」と語る。
佐倉も「もちろん使っている声帯の場所は違ってくるんですが、確かに、演じるうえでは男女の違いというより、個体差を考えるほうが大事ですね」とうなずく。ハヤト役のオーディションを振り返り、こう明かす。「ロボットもので、子ども向けの朝アニメということで、最初は“熱血で猪突猛進”というイメージでハヤト役にアプローチしていました。でもオーディションで、『それは全部捨ててほしい』と言われて。ハヤトはロボットアニメとしては、とても新しい主人公像だったんです。そこからはあまり“男の子役”だとは思わず、ハヤトは『好きなものに対して真摯に向き合っていて、探究心が強い人間だ』と掘り下げていきました。男の子よりも、ひとりの人間として見つめていくことが、役作りでは大事だったと思います」。
「理恵さんの走っているレールを進みたい」(佐倉)「いい仕事をするためにも、健康な精神と体が大事」(釘宮)
様々なキャラクターに魂を吹き込み、実力派として声優道を邁進している2人。ハヤトをはじめ仲間たちが日本の平和と安全を守る姿が描かれる本作だが、2人が仕事に励むなかで“守りたい”と感じているモットーとは?
佐倉は「いま私が大切にしているのは、自分より、作品とほかの人を大切にすることです」と回答。ストイックな姿勢で仕事に臨んでいるが、それは真ん中に立つ機会が増えて手にしてきた想いだという。「このお仕事を始めたころは、どうやって現場にいたらいいかもよくわからなかったですから。無力でしたね。いまは現場に出たら『自分のことよりも、作品の幸せのために注力できるようにしていたい』と常に思っています」。
釘宮は「私はずっと、“仕事のために生きる”というタイプで、アクティブに仕事をしてきました。20年以上そうやって仕事をしてきて、最近はいい仕事をするためにも、まずは健康な精神と体でいなくてはいけないと強く感じています」とキャリアを重ねるなかで、意識の変化があったという。「やっぱり、アウトプットだけではどうしても行き詰まってしまう。インプットの大切さや、自分の幸せを追求することも大事だなと考えるようになりました。インプットしたことは、表現力につながってくるもの。もともと読書が好きなのですが、本を読んだり、映画を観たり、余暇の時間も大切にしたいと思っています」。
釘宮の言葉を聞きながら、佐倉は「やっぱり理恵さんの考え方って、とてもステキで」と惚れ込み、「私は、理恵さんの走っているレールを進みたいと感じるんです。理恵さんが近くにいてくれることって、本当にすごく幸せなことで。私は声優になる前から、理恵さんの声を聞いていてステキだなと思っていたし、理恵さんが現場にいらっしゃると安心感があるし、同時に緊張感も持てる。こんな先輩になれたらいいなと思う指標なんです」と並々ならぬ尊敬の念を明かしていた。
取材・文/成田 おり枝