ゴールデン・グローブ賞、タランティーノ組の快挙とアジア勢の台頭!例年より早いアカデミー賞まで、あと1か月
米ロサンゼルス現地時間1月5日に行われた第77回ゴールデン・グローブ賞。例年通りの開催時期だが、今年は第92回アカデミー賞が約1か月早い2月9日に行われる関係で、ノミネーションに向けたロビイングも変わってきている。例年であればゴールデン・グローブ賞の受賞結果を受けてアカデミー賞のノミネーション投票が始まるが、今年は1月2日から7日までが投票期間となっている。つまり、気の早いアカデミー会員や、すでに心を決めている会員は投票を済ませてからゴールデン・グローブ賞結果を見ているのだ。順当受賞が多かったゴールデン・グローブ賞から、今年の賞レースの潮流を読んでみたい。
アジア勢の新時代
外国語映画賞に輝いた『パラサイト 半地下の家族』(1月10日公開)は、下馬評も興行収入も高く文句なしの受賞結果だ。ポン・ジュノ監督による、「字幕というほんの低い壁を乗り越えれば、すばらしい映画との出会いが待っている。ペドロ・アルモドバル監督をはじめ、同時にノミネートされたすばらしい監督たちを讃えたいと思います。私たちの共通言語は、“シネマ”だけです」というスピーチは、字幕の外国語映画にも関わらず世界中で今作がヒットしている現象を表している。前日に行われたパーティでは、『Okja/オクジャ』(17)でプロデューサーを務めたブラッド・ピットやクリント・イーストウッドと写真に写るポン・ジュノの姿が見られていた。また、昨年は司会も務めたサンドラ・オーが「キリング・イヴ/Killing Eve」でアジア系女優として初めてドラマ部門主演女優賞に輝いたが、今年は映画部門のコメディ/ミュージカル部門で、『フェアウェル』(19)のオークワフィナがアジア系女優として初の受賞となった。オークワフィナは『クレイジー・リッチ!』(18)のほかにも『オーシャンズ8』(18)、『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(19)と話題作に出演、アメリカではすでに“今年の顔”として雑誌表紙を飾るなど人気が高い。
『ワンハリ』強し、追い上げる『1917 命をかけた伝令』
授賞式会場であるビバリー・ヒルトンホテルのボールルームが最も湧いた瞬間は、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)でクエンティン・タランティーノが脚本賞を受賞した瞬間かもしれない。劇中でシャロン・テート役を演じたマーゴット・ロビーがプレゼンターで、名前を見たその瞬間に大きな笑みを浮かべていた。『ワンハリ』はコメディ/ミュージカル部門において作品賞、ブラッド・ピットが助演男優賞を受賞しており、3部門で最多受賞となった。また、ドラマ部門作品賞は『1917 命をかけた伝令』(2月14日公開)が受賞し、サム・メンデス監督も監督賞を受賞した。ドラマ部門には今年の賞レースを象徴するような強豪が揃っていただけに、賞レース後半に公開された『1917』の追い上げは眼を見張るものがある。
俳優部門では、ドラマ部門主演女優賞に『ジュディ 虹の彼方に』(3月6日公開)のレニー・ゼルウィガー、主演男優賞は『ジョーカー』(19)のホアキン・フェニックスが順当に下馬評通り受賞している。『ジョーカー』はこのほか、作曲賞も受賞。コメディ/ミュージカル部門主演男優賞は『ロケットマン』(19)でエルトン・ジョンに扮したタロン・エガートンが受賞、「エルトン・ジョン、すばらしい音楽と数奇な人生、そして僕と友達になってくれたことに感謝します」と本人を前にスピーチした。
最多ノミネーションにも関わらず…
Netflixは、今年の賞レースにマーティン・スコセッシ監督の『アイリッシュマン』(19)、ノア・ボーンバック監督の『マリッジ・ストーリー』(19)、フェルナンド・メイレレス監督の『2人のローマ教皇』(19)という3本の有力作品を投入。映画部門で17部門、テレビ部門で17部門の計34部門でノミネーションを勝ち取り、まさにクリエイティブ黄金期にあることを見せつけた。だが、受賞結果は『アイリッシュマン』、『2人のローマ教皇』は無冠、映画部門で『マリッジ・ストーリー』で敏腕弁護士を演じたローラ・ダーンが助演女優賞を受賞、テレビドラマ部門でも「ザ・クラウン」でドラマ部門主演女優賞をオリヴィア・コールマンが受賞したのみにとどまった。ドラマ部門ではAmazon Primeの「Fleabag フリーバッグ」がミュージカル/コメディ部門作品賞と主演女優賞(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)が受賞、HBOの「サクセッション」と「チェルノブイリ」も賞を分け合った。ノミネーション数が必ずしも受賞に繋がるわけではないが、受賞結果との乖離には何らかの理由があるのかもしれない。
来週発表のアカデミー賞ノミネーションは?
アカデミー会員の投票期間はあと2日。ゴールデン・グローブ賞の受賞結果を受けて影響を受けそうなのは、助演女優賞。このカテゴリーは、前評判で『ハスラーズ』(19)のジェニファー・ロペスが圧倒的強さを見せていたが、ローラ・ダーンの受賞を受けて熾烈な戦いが予想される。多くの人は授賞式後のパーティで浮かれているだろうが、偉大なる肩透かしを食らってしまったNetflix映画たちと共に、ジェニファー・ロペスも気合を入れ直しているところだろう。また、昨年の『スパイダーマン:スパイダーバース』(18)のような誰もが認める傑作がないだけに、アニメ―ション部門も混戦模様となりそう。ゴールデン・グローブ賞でアニメ賞を受賞した『Missing Link(原題)』(19)は一歩リード、ノミネート資格を得ている日本の4作品、『天気の子』(19)、『若女将は小学生!』(18)、『プロメア』(19)、『海獣の子供』(19)は本選ノミネートとなるだろうか。第92回アカデミー賞ノミネーションは現地時間1月13日に発表される。