「ペット・セメタリーは実在した」スティーヴン・キングが“禁忌ホラー”の誕生秘話を告白!
1989年に映画化されたスティーヴン・キングの同名小説を、『セーラ 少女のめざめ』(14)のケビン・コルシュ&デニス・ウィドマイヤー監督が再映画化した『ペット・セメタリー』が1月17日より公開中だ。このたび、本作の全米公開時に採録され、米「Entertainment Weekly」誌の2019年3月29日号に掲載されたキングのインタビューが到着。原作小説にまつわる様々な噂の真相が明らかになった貴重な証言を引用してみよう。
本作の主人公は家族と田舎町に引っ越してきた医師のルイス。彼は新居の裏に謎めいた動物の墓地“ペット・セメタリー”があることを知り、事故に遭った飼いネコを墓地の奥にある森へ埋葬する。しかし次の日、凶暴な姿で蘇ってきた飼いネコ。実は埋葬した場所は先住民が語り継ぐ秘密の森だった…。そんな中、娘のエリーが誕生日に交通事故で帰らぬ人に。そこでルイスはある行動を起こすのだが…。
70年代に小説家としてデビューし「キャリー」や「シャイニング」などの傑作を生み出してきたキング。本作の原作は83年に出版されたが、実はそれよりも前に完成しており“内容が怖すぎる”という理由で出版できなかったという噂が。その噂についてキングは「本当だよ」と告白。そして、当時契約していた出版社との関係に終止符を打つために出版に踏み切ったことを明かした。
多くのファンからは人気を集めた小説ではあるが、キング自体は「あまり好きではない」という。「少し前に久しぶりにこの小説に触れてみて、とにかく“これはひどい”と思ったんだ。書き終えたときにも同じことを思った。小説としてひどいというわけではなく、子どもの死を題材にしている点がね。私の子どもたちは舞台となったあの道路脇に住んでいたから、とても私的な内容だったんだ」と、自身の体験が基になって小説が生まれたことを語り始める。
「あの頃はメイン大学のライターとして仕事をするためにオーリントンという小さな町へ引っ越し、川沿いにある家を借りて住んでいたんだ。その家の裏にペット・セメタリーがあって近所の子どもたちはそこへ続く小道を作っていたんだ。さすがにあの不気味なマスクはしていなかったけどね(笑)。でもペット・セメタリーは実在し、とても素敵な場所だったよ」。
さらにキングは「娘の飼っていたネコが死んでしまい、ペット・セメタリーに埋めたことがあったんだ。その時に、もし埋めたはずの動物たちが蘇ったらどうなるんだろうと考えはじめた」と、着想の経緯を明かす。「ペットだけでなく人間も復活させたいと思い、北米のインディアンに伝わる邪悪な精霊“ウェンディゴ”について調べ、融合させることにしたんだ」。
そして誕生した「ペット・セメタリー」の原作は、ホラーであると同時に子どもを失う親の悲しみが描かれた深い物語となった。「この小説は重い病気や諦められない思いを経験したことがある人なら理解できると思う。生きていれば親や祖父母の死を経験するのだから、すべての人が共感できる内容なんじゃないかな。改めて読み返してみると、辛くなるほどにその悲しみが溢れていると感じたよ」と語った。
前回の映画化の際には「この作品を少しでも良くできるんじゃないか」という想いで脚本に参加したというキングだが、今回の映画化ではあくまでも原作者に徹した。そして完成した作品について「すごく良いよ!大人向けの作品で、サマーキャンプでたくさんの子どもたちが殺されるような映画とは大違いだよ!」と手放しで大絶賛。
概ね忠実に映画化された本作ではあるが、原作では弟のゲイジが事故で亡くなっていたのに対し、姉のエリーが亡くなるという展開に改変が施されている。「原作とは違うが良いと思う。ネットでは反感が凄かったが、これによって何かが変わるわけではない。大きく変えてしまっても上手く出来上がっていれば結果オーライだと思うし、失敗していたら“なんで変えたんだよ!”って思うだろうね。過去には何度かそういうことがあったからね(笑)」と、『シャイニング』(80)や『クジョー』(83)の例をほのめかした。
代表作の一つを映画化した『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(17)が大ヒットを記録して以降、キング小説の映像化が相次いでおり「毎日のように新たな契約話が来たり、毎日のように脚本をチェックしている。つまり私はいま売れっ子ってことだ」と微笑むキング。その中には今回の『ペット・セメタリー』のようなリメイク作品が多く見られ、その理由について「『IT/イット』の成功が大きかったから、きっとみんな“古い話の中に輝くなにかが隠されているはず”と思ったんじゃないかな」と分析。
そして「だから今後も多くの過去作がリメイクされるはずだ」と語るキング。自作がリメイクされることについて「猛スピードで走る車のボンネットに縛り付けられている感じだよ(笑)」と表現すると、「でも普段は忙しいからあまりそのことを考えないんだ。私は小説を書くほうが好きだから、みんながストーリーを待ち望んでいるいま、私にはまだまだ伝えたいストーリーがあるからね」と、今後も新たな傑作を生みだしていく意気込みをあらわにした。
構成・文/久保田 和馬