宮沢氷魚、藤原季節からの感謝の言葉にハニカミ!「愛にあふれている作品だと思います」
『愛がなんだ』(19)や『mellow』(公開中)など、恋愛映画の旗手として多くの映画ファンから絶大な支持を集める今泉力哉監督が、新境地に挑んだ意欲作『his』の公開記念舞台挨拶が25日にTOHOシネマズ日本橋で開催。主演を務めた宮沢氷魚を筆頭に、藤原季節、松本若菜、外村紗玖良、そして今泉監督が登壇した。
本作はかつて恋人同士だった男性2人が再会し、自分たちの生き方を模索していく姿を描いた物語。高校時代に出会い、友情から愛情と発展していった井川迅と日比野渚の関係は、迅の大学卒業を控えた頃に終わりを迎える。それからしばらく経ち、1人でひっそりと田舎暮らしを送っていた迅の前に、妻・玲奈との離婚調停中の渚が6歳になる娘の空を連れて現れる。初めは戸惑いながらも、次第に3人で暮らしたいと思い始める迅。しかし離婚調停の中で心ない言葉を浴びせられ、自分たちを取り巻く環境に改めて向き合うことに…。
迅役を演じ、映画初主演を果たした宮沢は「お話をいただいた時には初主演ということもあり、プレッシャーを感じました」と吐露。そして「LGBTQを題材に扱うと聞いてセンシティブなテーマに自分は向き合っていけるかなとも思っていたのですが、周りにも同性愛者の友人がいて、LGBTQを題材にした作品に出て少しでも彼らが生きやすい世界を作りたいと思っていたので、前向きに作品に入ることができました」とコメント。
一方で、撮影中には娘役を演じた外村に引っ張ってもらっていたという藤原は、外村から手作りのキーホルダーを作ってもらったことを明かすと「ありがとうね色々。本当に助けていただいて」と優しく微笑みかける。さらに母親役の松本から「(藤原と外村の)2人は兄妹みたいに本気で喧嘩したりしてましたね」と明かされ、「空を泣かせちゃったら急いでカメラ探して、泣いてる写真を撮るみたいな(笑)。全部の顔を撮っておきたくなって。泣いた顔も寝た顔も全部見たくなっちゃいました」とすっかり父親の表情。それには宮沢も「側から見たらなにやってんだよって感じでした(笑)」と困り顔を浮かべていた。
さらに宮沢は、本作に臨む上での役作りについて訊かれ「勉強と言っていいのかわからないですけど、周りの同性愛者の友達と普通にご飯やお酒飲みに行って、彼らの素の部分や空気感を自分のものにできたらと思っていました」と明かし、「映画とか本とかでは得られないものだと思っていたので、そこで得た経験を大事にしました」と語る。
また藤原も役作りには相当苦労したようで「どんなに準備しても前日に自分が渚になっている気がしなくて、わからないまま撮影に入って突き進んでいって、最後までわからず、いまもわからないままです」と語ると、宮沢も「すごくわかる」と同意。今泉監督から「終わった瞬間の開放感が凄かったんで、余程苦しかったんだなと思いました」と声を掛けられ、藤原は「人生で初めて終わった後清々しかったです!」と力強く語っていた。
そして「初主演映画で、このようなキャストの皆さんと今泉監督と、白河という美しいところで撮影ができて本当に幸せでした。町の方達も参加してくれて、全体的に温かい、愛にあふれている作品だと思います」と本作を振り返る宮沢。そんな宮沢に対して藤原は「個人的には感謝の気持ちでいっぱい。氷魚くんのストレートさに助けられて、渚に似た弱さを、迅である氷魚くんが光で照らしてくれた。撮影が終わってからも、この作品と向き合ってきた1年間も変わらなくて、感謝しています」と真剣な表情で告白。宮沢は「うれしいですね」とはにかんだ笑顔を見せた。
取材・文/久保田 和馬