『アジャストメント』エミリー・ブラント「この作品を見て、マットと私のカップルを応援して!」
人気SF作家フィリップ・K・ディックの短編小説を、マット・デイモン主演で映画化したサスペンスアクション『アジャストメント』(5月28日公開)。何げない日々の出来事も全てが謎の集団・運命調整局によって操作されているという奇妙な世界で、誰にも支配されない運命を手に入れようと奔走する男の姿を描き出す。本作でヒロインのエリース・セラス役を演じたエミリー・ブラントのインタビューが届いた。
――どういう経緯でエリース・セラスというバレリーナ役に抜擢されたんですか?
「ジョージ・ノルフィから声がかかるなんてほとんど不可能に近い話だったの。第一、彼はバレリーナの人としかオーディションをしてなかったのよ。脚本を読み終えて6週間たった頃、彼が女優さんと会い出している聞いたんだけど、いざ会ってみると、もし万が一にでもこの役をやることになったら、相当トレーニングしないと無理だって、それがはっきりしたわね。その後、マット・デイモンとスクリーンテストをして、役が本決まりになったわけ!」
――バレエは素人ということで誰に習ったんですか?
「セダー・レイクっていう革新的なモダンダンスのバレエ団があって、本当に素晴らしい人たちなんだけど、その人たちのトレーニングを受けたの。自分たちのやってることを、たかが女優ごときに汚されたくないっていう、ちゃんとしたバレエ団だから、踊りに対する愛情が半端じゃないわけね。そういう人たちに鍛えられたんで、すごく助かったわ。そんなこととは露知らず、私たちは全部のシーンを撮ろうとしてたんですものね。最初は本当にひどかったけど、一日ごとに徐々に身についていく毎日というのは、すごく良い経験になったわ」
――あなたから見て、エリースはどんな人物ですか?
「すごくしっかりしていて、自立した女性ね。デヴィッド・ノリスと会うまでは“男なんかあっち行け”みたいな感じの生活をしてたのね」
――彼女はそのデヴィッドの中に何を見るのでしょうか?
「すぐ彼には興味を持つの。デヴィッドもデヴィッドで、エリースに気後れしたり、恐れをなしたりもしないのね。ふたりはすぐに言葉にはならない秘密の会話みたいなものができるようになる感じね。ふたりはトイレで初めて出会った時、本当に恋に落ちるんだと思う」
――デビッドとの出会いで、エリースの生活はどう変わるんですか?
「ふたりの出会いがある前は、彼女にはバレエが全てで、そこが彼女の居場所だったのね。エリースは、あんなに人を近づける人間じゃなかったと思うの。ところがデヴィッドという存在が現れて、そこまで魅かれていく自分に驚くのね。デヴィッドはそれまでの彼女の生活になかったものを満たしてくれたんだわ」
――ふたりの関係にとってユーモアはどのくらい大事なんですか?
「私はとても大事だと思うわ。共通のユーモア感覚をどのくらい持てるかで、関係が決まるっていうことは多いわね。マットと私の相性の良さはユーモアから来るものだもの。お互いに心から笑ってるし、それが画面にもにじみ出てるわね。見ていただくお客さんにはデヴィッドとエリースが魅力あるカップルと感じてもらいたいじゃない」
――仕事相手としてのマット・デイモンはどんな感じですか?
「マットは最高よ。もう言うことなしだわ! すごく真に迫ってるし、ゆったり感があるし。一緒にいて本当に楽しい人なの。何をしても、すごく格好良い人よ」
――セット撮影の彼との絡みはアドリブなんですか?
「ジョージは自分の書いた脚本に対してそれほどうるさくなくて、自由にアドリブをさせてくれるので、すごく助かったわ。セリフにも遊びを入れさせてくれるし、他のやり方をやってみたら人物に別の面が出るかもしれないからってシーンの引き延ばしもさせてくれるの。それにジョージはすぐその場で台本の書き直しをする人なんで、そこがすごいわね」
――調整局のメンバーとしての助演陣にもすごく恵まれましたね
「そうね。でも、あの人たちとの絡みは私よりマットの方が多いの。どの人物も真に迫ってるのは彼らの力だわ」
――この映画はジョージ・ノルフィの監督第一作目ですね
「彼が素晴らしい脚本家なのは知ってたわ。これが初監督作なんて信じられないくらい。一緒に作っていこうっていう感じが、彼の素晴らしいところね。マットとは前から友達だったのもすごく助かった。彼が監督のアイデアをどんどん受け入れるから。初めて映画の監督をやるなんて、とても勉強になるでしょうね。だってセットに入ると、自分よりも経験豊富な人たちばかりが周りにいるわけだから。ジョージはスポンジみたいな人で、そういう経験をどんどん吸収していく人だったわ。いろんな経験をどんどん身につけていく反面、この映画をどう持っていきたいのか自分の意見もしっかり持ってる人ね。映画人としての輝かしい未来が待ってると思うわ」
――この『アジャトメント』の映像はとてもユニークですね
「撮影監督としてジョン・トールみたいなアカデミー賞の受賞経験があるカメラマンがついてくれたのはとてもラッキーだったわね。彼のおかげでこの映画の映像は文句のつけようがないし、すごくリアルな感じにもなってるわ。本当、ニューヨークへのラブレターって感じ」
――完成した映画を見てどう思いましたか?
「もう最高! 運命対自由意志という全編に通じるテーマも好きだし、ジョージの調整局の処理もあまり深刻じゃなくて、さらっとやってるしね。このカップルがうまくいきますようにって、この映画を見た人に応援してもらいたい気持ちが一番強いわね」
現在、28歳のエミリー・ブラントは『ガリバー旅行記』(公開中)でメアリー王女を演じ、またディズニーの3Dアニメーション『Gnomeo&Juliet』(日本公開未定)でヒロインのジュリエットの声も担当するなど、女優として乗りに乗っている。今後もリン・シェルトン監督『Your Sister's Sister』(公開時期未定)や、タイムトラベルをテーマにしたSFスリラー『Looper』(全米2012年公開予定)ではジョゼフ・ゴードン=レヴィットやブルース・ウィリスと共に主演を務め、ディズニーの『The Muppets』(全米11月23日公開)ではザック・ガリフィアナキスやエイミー・アダムスと共演するなど、その勢いは止まるところを知らない。まだエミリーのことを知らなかった方は、これを機会にしっかり覚えてもらいたい。【Movie Walker】