『ジョーカー』『パラサイト』…映画で目撃する“世界のいま”!ヨーロッパ発の社会派映画も続々日本上陸
日本時間2月10日(月)に授賞式が行われる第92回アカデミー賞で大きな注目を集めている『ジョーカー』(公開中)や『パラサイト 半地下の家族』(公開中)、そして日本映画として21年ぶりにカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した『万引き家族』(18)など、近年様々な角度から現代社会に警鐘を鳴らす作品が世界的に高い評価を受けている。
第92回アカデミー賞の国際長編映画賞にフランス代表として選出され、見事ノミネートを果たした『レ・ミゼラブル』(2月28日公開)もその一本。これまで幾度となく映像化されてきたヴィクトル・ユゴーの傑作「レ・ミゼラブル」の舞台として知られ、現在は犯罪多発地区の一部となっているパリ郊外のモンフェルメイユが舞台の本作は、貧困や格差、権力の横暴と力なき者の行く末が、スタイリッシュな映像と共に描かれていく。
メガホンをとるのは本作が長編デビューとなった新鋭ラジ・リ監督。モンフェルメイユで生まれ育ち、現在もその場所に暮らすアフリカ系フランス人であるリ監督の実体験が、本作には数多く投影されているのだとか。フランスでは公開から約2ヶ月で観客動員数200万人を突破する大ヒットを記録。またフランス版アカデミー賞であるセザール賞でも12部門にノミネート。花の都パリから見放された“陸の孤島”から放たれた現代社会への告発に、フランス全土のみならず世界中が大きく揺れようとしている。
この『レ・ミゼラブル』以外にも、現代社会に横たわる歪みという“時代の声”をすくい取るヨーロッパ発の社会派映画の注目作が続々と日本に上陸している。ついに先日EUからの離脱を果たしたイギリスからは、“働き方”と急激な時代の変化に翻弄される家族の姿を、暖かな眼差しと社会への怒りを込めて描いた『家族を想うとき』(公開中)。
東欧の旧ユーゴスラビアの構成国であった北マケドニアからは、2014年に実際にあった出来事を下敷きに、“女人禁制”の伝統儀式に思いがけず参加してしまった女性が巻き込まれる騒動を描いた『ペトルーニャに祝福を』(4月25日公開)。さらにチェコからは、第二次大戦中にホロコーストから逃れるために田舎に疎開した少年を通して、異質な存在を排除しようとする“普通の人々”を赤裸々に描くことで不寛容社会に生きる我々に大きな問いを投げかける『異端の鳥』(初夏公開)。
いずれも世界各国の映画祭で賛否両論を巻き起こし、大きな反響を集めた作品ばかり。世界各地で暴動やデモが頻発し、日本ももはや他人事ではいられない時代を迎えているいまだからこそ、これらのように国境や人種、性別などを超えて同時多発的に生まれている現代批判に満ちた社会派映画を通して、“世界のいま”に目を向けてみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬