人気アイドルEXOのD.O.が放つ、“俳優”としての抜群の存在感
『サニー 永遠の仲間たち』(11)のカン・ヒョンチョル監督が、朝鮮戦争下の韓国最大規模の捕虜収容所を舞台にタップダンスに情熱を燃やす人々の姿を描いた『スウィング・キッズ』が現在公開されている。その中でひと際大きな存在感を放っているのが主演のD.O.(ディオ)だ。
人気K-POPグループEXOのメンバーとして活躍するD.O.は、2014年に俳優デビューを果たすと『純情』(16)や『あの日、兄貴が灯した光』(16)、『7号室』(17)などで主演を経験。『あの日、兄貴が灯した光』では、韓国で最も権威のある映画賞のひとつ青龍映画賞の新人賞を受賞するなど、俳優としてもすぐさま才能を開花させた。
2015年のドラマ「君を憶えてる」でサイコパスな犯罪者を演じたと思えば、大ヒット作となった「神と共に」シリーズでは、軍隊に順応できない一等兵を繊細な演技で体現。さらに韓国で高視聴率を叩き出した時代劇ドラマ「100日の郎君様」では、偉そうで気難しい王世子とその王世子が記憶喪失になり天然で役立たずになってしまった姿の2つの性格を演じ分け、演技力の高さを披露。俳優として興行力と実力を兼ね備えた、現在、最も必要とされている存在といっても過言でないだろう。
主演最新作『スウィング・キッズ』でD.O.は、韓国の巨済(コジェ)捕虜収容所で生活する北朝鮮側の捕虜のギスを演じている。ギスは米兵にもひるまず周囲から頼られる快活な若者。ある日、元ブロードウェイのタップダンサー、ジャクソンにダンス勝負を挑んだことをきっかけに、密かにタップダンスの魅力に取り憑かれていく。
圧倒的なダンスの説得力が必要な難役だが、D.O.はアイドルとして培った身体能力とセンスに加え、半年ほどにも及ぶ猛特訓を経て完成させた見事なパフォーマンスを披露。顔の表情から手足の先まで巧みに体を操り、喜びや楽しさといったギスの感情をスクリーンいっぱいに表現し、抜群の存在感を発揮している。
また北と南という対立に翻弄されていく様子やギスの心情を表す繊細な演技も圧巻だ。周囲に秘密で、アメリカの文化であるタップダンスにのめり込み、ジャクソンとも心を通わせていく一方で、敵に反抗し命を奪っていく北朝鮮の同志たち。そしてその報復をする米兵たち…。イデオロギーの違いがもたらす悲劇に対して浮かべるやりきれない痛切な表情には、心を揺さぶられてしまう。
カン・ヒョンチョル監督も「彼の人生に運命があるならば、この映画と出会う運命があっただろう」と絶大な信頼を寄せた俳優D.O.。現在は軍に服務しているが、この早期での兵役も『神と共に』の続編に出演するためとも言われており、今後の俳優としてさらなる活躍に期待大だ。
文/トライワークス