『パラサイト』ポン・ジュノ監督が再び来日!映画作りの目標地点は「黒澤明のようなクラシック」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『パラサイト』ポン・ジュノ監督が再び来日!映画作りの目標地点は「黒澤明のようなクラシック」

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『パラサイト』ポン・ジュノ監督が再び来日!映画作りの目標地点は「黒澤明のようなクラシック」

ポン・ジュノ監督、新型コロナウイルスの拡大についても持論
ポン・ジュノ監督、新型コロナウイルスの拡大についても持論

第92回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門受賞の快挙を果たした『パラサイト 半地下の家族』(公開中)の凱旋来日記者会見が2月23日に日本記者クラブで開催され、ポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホが出席。ジュノ監督は「この映画に対して、熱く反応してくださった日本の観客の皆さまに感謝を伝えたい」と笑顔で挨拶し、1時間にわたる会見で受賞の喜びや、映画づくりにおける目標などを語った。

【写真を見る】『パラサイト』ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホがそろって来日!
【写真を見る】『パラサイト』ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホがそろって来日!

本作は、全員失業中で半地下の部屋に暮らす貧しいキム一家が、高台の大豪邸に暮らす裕福な一家に“寄生”=パラサイトしていく姿をブラックユーモアとサスペンスを交えて描く人間ドラマ。世界各国で記録的なヒットを飛ばしており、日本でも興行収入30億円を突破、動員220万人を超えるなど“パラサイト旋風”を巻き起こしている。

アカデミー賞での快挙について、ジュノ監督は「喜ばしく、光栄なことではありますが、計画していたことではありません。賞を目標に映画を作ったわけではない」と口火を切り、「どの国のお客様も熱く反応してくださった。そのことがなによりもうれしい」とコメント。「世界的ヒットの要因は?」と聞かれると、「私自身も不思議」と苦笑いを浮かべながら、「周囲の反応では『後半の展開がおもしろくて新鮮だ』という意見を多く聞きました。俳優たちのアンサンブル。その力が大きかったのでは」とキャスト陣を称えていた。

ソン・ガンホも喜びを語った
ソン・ガンホも喜びを語った

ジュノ監督自身が本作で最も描きたかったのは、「未来に対する恐れ」だという。「韓国、日本、様々な国で同じように、二極化という苦痛を抱えていると思う。その事実を暴きたいというよりも、『未来の社会は二極化を克服できるのか』という恐れがあった。それを映画のなかで表現してみたかった」。さらには「私の性格からして、メッセージやテーマを真顔で相手に伝えるのは得意ではない。冗談まじりに伝えるのが好きなんです。メッセージを主張したり、強要するのではなく、映画的な活力のなかでおもしろく伝えたかった」と本作に込めた想いを語っていた。

「現実と創作物が相互に侵入し合っていくのは自然な流れ」と映画は時代を映す鏡だと話したジュノ監督だが、いま世界的に拡大している新型コロナウイルスの拡大についても持論を述べた。「最近の状況を見ていると、『20世紀少年』も思いだす」と浦沢直樹の漫画を引き合いに出し、「ウイルスの恐怖以上に、人間の心理が作りだす不安や恐怖の方が大きいと思う。不安に巻き込まれすぎると、災害を克服するのが難しくなる。私の映画『グエムル 漢江(ハンガン)の怪物』では、実際には存在しないウイルスをめぐるパニックを描いた。もちろん映画とは違う状況ではありますが、状況に過度に反応して国家的、人種的な偏見が加わると、より恐ろしいことが起きてしまう」と鋭い視点で情勢を見つめていた。

世界中の映画人を刺激する作品を生みだしたジュノ監督。「実は目標があります」と照れながら、「自分の作品が、歳月や時間を乗り越える、クラシックの映画になってほしいという妄想を持っています。キム・ギヨン監督の『下女』や黒澤明監督の『七人の侍』、ヒッチコック監督の『めまい』のような作品を作りたい。ほぼ妄想ですが(笑)。『賞を獲りたい』『成功したい』といった不純物が混ざることなく、あくまでもストーリーと向き合っていきたい」と力強く語っていた。

取材・文/成田 おり枝

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