松本人志監督作『さや侍』の名子役・熊田聖亜「野見さん、本当に怪我してた」
松本人志監督3作目のオリジナルの時代劇『さや侍』(6月11日公開)で、ブレイク必至の子役が熊田聖亜だ。彼女が演じるのは、バラエティ番組「働くおっさん劇場」の野見隆明扮する主人公・野見勘十郎の娘たえ役。さやしか持たないさや侍が、言葉もなく、ただ体を張った一発芸を連打する中、たえは父親にナイスフォローを入れる存在だ。そんな熊田にインタビューをしたら、野見隆明のリアルな流血ネタをはじめ、松本組の撮影秘話を色々と聞くことができた。
まずは、たえ役に抜擢された時の喜びから。「オーディションを受けた時、監督が誰かってことを教えてもらってなくて。松本さんが監督さんってことを後から知って、すっごくびっくりしました。それで衣装合わせでお会いして、すごく感動して涙が出ちゃって。パパが前からファンだったし、松本さんのいろんな番組を見ていたので」。
現場では毎日とても楽しかったという。「松本さんが現場で、すべらない話をしてくださった時があって。それがすっごく面白かったんですが、その後、テレビで同じ話をされていて。一番最初に聞いたのは聖亜だ!って思いました」。
さや侍こと野見勘十郎は、武士なのに刀を持たず、さらに脱藩の罪でお縄になった不甲斐ない父親だ。彼は殿様(國村隼)の命で、笑顔をなくした若君に一日一芸を見せ、三十日以内に笑わすことができなければ切腹という、三十日の業を強いられる。熊田は撮影を振り返ってこう語った。「野見さんが芸で飲み込んだ金魚を吐き出すという日があって。『どうでしたか?』って聞いたら、『大丈夫、大丈夫!』って笑って言ってたけど、録った映像を見てみると、『うおぉ!!』って言ってて(笑)。全然大丈夫じゃないじゃんって思いました」。
たえは、父の奮闘ぶりを毎日見ていくうちに、少しずつ心を動かされていくが、現場の熊田も同じような変化があったらしい。野見の父親像について、熊田は「最初はこんな人がお父さんだったらちょっと嫌かなって思いました。でも、最後の方はすごく格好良い顔をされてるんです。すごいな!って思いました」。
さらに「野見さんは、本当に一生懸命やる人です」と興奮しながら語る。「ふすま破りの芸がすごかったです。実際に、手や膝の皮がむけたり、怪我をしてたりしてて。でも、何枚も何枚もふすまを破っていくんです。その時、『野見さん、頑張れ!頑張れ!』って、心の中で応援してました」。なるほど、父にエールを贈る表情は、まんざら演技ではなかったのかもしれない。
最後に、今後共演してみたい俳優について尋ねると、「松本さん!」と即答。「今回、監督だったから、今度は役者として同じシーンで共演してみたいです」。また、今後やってみたい役柄については、「お金持ちの役とか、お嬢様の役とか。あと、戦える子供の役、アクションもちょっとやってみたいです」と元気に答えてくれた。
熊田の容姿は、『パラダイス・キス』(公開中)で北川景子扮するヒロインの幼少期を演じたくらいに愛らしいが、『さや侍』では初の時代劇で準主役ともいえる重要なポジションを見事に演じ切り、さらに株を上げそうな予感。さすがは、松本人志監督のお眼鏡に適った子役だけのことはある。野見隆明の大熱演と共に、小さな女優の好演ぶりに是非注目したい。【取材・文/山崎伸子】