『アベックパンチ』で主人公イサキを演じた牧田哲也の素顔とは?

インタビュー

『アベックパンチ』で主人公イサキを演じた牧田哲也の素顔とは?

男女一組がペアを組んで敵のペアと戦うという架空の総合格闘技に燃える不良高校生の奮闘を描いた青春映画『アベックパンチ』(公開中)。タイム涼介による人気コミックを原作にした本作で、主人公・イサキを演じた牧田哲也に独占インタビューを行った。自らを「平和主義者」と話す彼が、不良高校生のイサキを演じるうえで考えた役作りの苦労話や、撮影現場でのエピソードなどを大いに語ってくれた。

オーディションでイサキ役を射とめた牧田。だが、イサキという人物を演じることについて、「もともと自信がなかった」と話す。「自分ではオーディションに受かると思ってなかったんです。不良高校生という設定ですが、僕にはそんな雰囲気はないし、結構人見知りなところがあって、オーディションでも緊張してしまったので、自信がなかったんです。ヒラマサ役の鈴君(鈴之助)とは以前から知り合いだったんですが、オーディション会場に鈴くんが現れた時は、『ヒラマサにドンピシャだな!』と思いました。監督が僕を推してくれたらしく、決まった時はびっくりしました。実際に鈴君とふたりで出演できるなんて思ってもみなかったので嬉しかったですね」。

D-BOYS準グランプリを受賞し、ミュージカル「テニスの王子様」での4代目・桃城武役で注目を集めた牧田。本作は彼にとって単独初主演作品となる。「実は、単独主演ということは、撮影が終わっから聞いたんです。イサキとヒラマサの話が大きいので、ふたりでダブル主演だと思ってたんです。ただ、イサキは物語の流れを作る重要な人物ではあるので、そういう意味ではプレッシャーは感じていました。また、今回はアクションも重要な部分なので、撮影に入る前に引き締めようと、走ったり、筋トレしたり、ジムも行きましたね。鈴くんと家が近いので、ふたりでセリフ合わせしながら、公園で走ったりしました」。

役作りでは、体だけでなく、イサキの雰囲気を出すために細やかな動きに気を配ったと話す。「イサキって男として格好良いんですよ。原作者のタイムさんにとっての理想の男性像なんだと思います。でも僕は格好良くない。ビビリなんですよ。昔から消極的だし、小心者なんです。僕のせいでイサキが情けなくなっちゃうのが嫌でしたね。特に原作を読まれていた人にとっては、イサキのイメージもあるだろうし。でも見せかけだけの不良になっても格好悪い。ちょっとした自然な仕草で格好良く見えると良いなと思いながら演じました」。

イサキの人物像をひたむきに探っていった牧田は、次第にイサキとの内面的な共通点を感じ始めた。「不良っていう第一印象は自分とは違ったけど、中身は自分に近いところもあるなと感じました。イサキは人との距離を考える。僕も似たところがあるので、人間関係についての考え方がイサキと僕は近いんですよ。逆にヒラマサは本能の赴くまま生きているというか、人との距離も壁があんまりない。イサキが作る壁をなぎ倒してくるのがヒラマサ。実際、僕の周りにもヒラマサのような友達もいるんです。イサキとヒラマサは真逆のふたりだけど、居心地が良いからつるんでいるんだと思います」。

撮影が行われたのは、今年の年明け。「試合のシーンは室内でしたが、外は雪が降っていて暖房が入っていてもすごく寒かったです。でも、リングの上は照明が当たっているんで、床暖房みたいに暖かいんですよ」。ちなみに撮影現場の雰囲気については? 「女性陣がいつもキャッキャしてて、控室はお花畑のようでした。もう満開(笑)。また、鈴くんが見た目はあんな感じですが意外と乙女なんですよ。だから女子トークに鈴くんが加わって、僕だけ一歩引いた位置で話したりしているっていう感じ。すごく和気あいあいとした楽しい現場でした」。

イサキは、水崎綾女扮するメバルとペアを組み、息の合った技を次々と繰り出す。だが、実は牧田にとって本格的なアクションは今回が初のこと。劇中での華麗な動きは、かなり難しかったのでは? 「僕、アクション経験がなかったんですが、うまく撮っていただいて映像ってすごいなと思いました(笑)。鈴くんはアクションの経験者だし、女性陣ふたりもすごくて、キックも足がびっくりするほど上がってました! メバル役の水崎さんが不安な僕を引っ張ってくれて、技の動きの面でも、彼女が積極的にアイデアを出していました。アベックパンチという未知の格闘技の世界なので手探り状態でしたが、水崎さんについていくことで演技に集中できました」と、イサキ&メバルペアは、演技の面でも精神的に協力し合っていたようだ。そんな中、格闘シーンならではのアクシデントもあったとか。「試合のシーンのリハーサルをしている時、『こうすれば良いですか?』って軽くやったつもりが、鈴くんに思いっきり強く当たっちゃって、結構すごい音したんですよ! 鈴くんは優しいから、笑って許してくれましたが、内心どう思ってるかわかりません(笑)」

人気コミックの実写とあって、原作ファンからの注目度も高い本作。最後に映画を見る人にメッセージをくれた。「小説なら自分で想像を膨らませるし、漫画ならイメージがあるので、原作を読んだ全ての人が、イサキを演じたのが僕で納得してくれるということはないと思いますが、映画の作品世界を楽しんでもらいたいですね。スポーツは体力的にも心理的にもハードなものですが、特にコンビを組むものは、四六時中一緒なわけで、より人間的なつながりが必要になると思います。イサキとヒラマサの人間関係がリアルで、絆の大切さを感じてもらえる作品だと思います」。【取材・文/鈴木菜保美】

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