スプラッターの原点も!“イタリアン・ホラーの父”マリオ・バーヴァの軌跡<写真14点>
ダリオ・アルジェント監督の『サスペリア』(75)やルチオ・フルチ監督の『サンゲリア』(79)など、70年代に世界的ブームを巻き起こし数多の傑作が生まれたイタリアン・ホラー。その先駆者であるマリオ・バーヴァ監督の、没後40年を記念して発売される「没後40年 マリオ・バーヴァ大回顧ブルーレイBOX」に収録されるのは、ホラー映画ファンはもちろんのこと全映画ファン必見のタイトルばかりだ。
1914年にイタリア北西部に位置するサンレモで生まれたバーヴァは、映画カメラマンであった父の影響を受けて撮影技師として映画界入り。ネオレアリズモの巨匠ロベルト・ロッセリーニ監督の作品などで撮影監督を務めた後、57年に長編監督デビュー。そして初の“ジャーロ映画”となる『知りすぎた少女』(63)や、“スプラッター映画”の最初期作品といわれる『血みどろの入江』(76)などで多くの映画監督に影響を与え、『ザ・ショック』(76)を遺作に80年4月27日にこの世を去った。
このたび発売される「没後40年 マリオ・バーヴァ大回顧ブルーレイBOX」は6月10日(水)発売の第1期と8月5日(水)発売の第2期に分けられ、それぞれ7作品と6作品の計13作品が収録(単品ブルーレイも同時発売)。日本初紹介となる3作品を含め、すべての作品が本邦初ブルーレイ化となり、その鮮烈な映像の数々が高精細によみがえる。
第1期に収録されるのは、前述の『知りすぎた少女』に加え、ホラー映画史に残る金字塔的作品『血ぬられた墓標』(60)、オムニバス構成の『ブラック・サバス/恐怖!三つの顔』(63)、Jホラー作品に多大な影響を与えた最高傑作『呪いの館』(66)、日本初紹介となる史劇『ナイヴズ・オブ・ジ・アベンジャーズ』(66)に、バーヴァ自身が“最大の失敗作”と位置付ける『ファイブ・バンボーレ』(70) 、そしてマカロニ・ウエスタンの『ロイ・コルト&ウィンチェスター・ジャック』の7作品。
また第2期には『血みどろの入江』を筆頭に、当時人気女優だったエルケ・ソマーがヒロインを務めた『処刑男爵』(72)や『リサと悪魔』(73)、日本未公開の犯罪映画『ラビッド・ドッグズ』(74)と、同じく日本未公開のコメディ『フォー・タイムズ・ザット・ナイト』(72)、そして『リサと悪魔』に追加撮影と再編集を施しヒットを記録した『新エクソシスト/死肉のダンス』(75)といった70年代に製作されたカルト的人気を誇る6作品が凝縮。
クエンティン・タランティーノやギレルモ・デル・トロ、ティム・バートンといった現代映画界を代表する人気監督たちはもちろん、リドリー・スコット、マーティン・スコセッシ、ジョン・カーペンター、デヴィッド・リンチ、そしてフェデリコ・フェリーニと、バーヴァ作品の影響を受けた映画作家の名前を挙げていけば枚挙にいとまがない。
発売される各作品には“バタリアンズ”(山口雄大と井口昇)のオーディオコメンタリーも収録されているので、この機会にイタリアン・ホラーの巨星の軌跡をたどる最重要資料をコレクションに加え、その類稀なる映像表現と世界観を余すところなく堪能してみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬