新型コロナ対策外出禁止令のなか、肝いりのストリーミングサービスQuibiが始動

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新型コロナ対策外出禁止令のなか、肝いりのストリーミングサービスQuibiが始動

Quibiはコンテンツ力で顧客の心をつかむことができるのか?
Quibiはコンテンツ力で顧客の心をつかむことができるのか?

他方、いまがストリーミング・サービス始動の絶好のチャンスだという見方もある。3月半ばの外出禁止令以降、市場全体が落ち込んだ瞬間を除いてNetflixの株価は上昇傾向にある。本日(4月6日)の終値は379.96ドルで、過去最高値を記録した2018年7月の408ドルに近づいてきている。教育機関も5月末の学期末までの再開は難しく、このまま長い夏休みに突入してしまうだろう。

子どもがいる家庭ではしばらくの間、Disney+の豊富でキッズ・フレンドリーなコンテンツが必要不可欠になる。5月にサービス開始を予定しているHBO MAXは先週末よりおよそ500時間分のオリジナル作品や兄弟会社であるワーナー映画作品を無料公開し、メンバーシップ獲得への助走を始めた。この無料配信にHBOの人気作品の「ゲーム・オブ・スローンズ」や「チェルノブイリ」は含まれていないが、外出禁止令発出以降HBOの視聴時間は4割以上伸びているという報道もある。

さらには、短いコンテンツを配信するのはQuibiだけではないということ。家に篭っている人々はYouTubeで、Instagramで、Facebookで映像を観て、さらには毎日行われている大統領や知事・市長の記者会見をテレビのニュースやライブ・ストリーミングで確認し、ZoomやFaceTimeでの家族・友人との会話を楽しんでいる。可処分時間を争う相手は、既存のストリーミング・サービスだけではない。

すでに配信開始されているスリラー映画『Most Dangerous Game』
すでに配信開始されているスリラー映画『Most Dangerous Game』

では、Quibiのコンテンツはどうだろうか?ちなみにQuibiの目玉は10分間の短いコンテンツというだけでなく、Turnstyleと呼ばれるスマホ画面の縦でも横でも映像を観ることができる特許技術だ。このローンチにおいて約50作品のオリジナルコンテンツを用意し、1年間で175作品まで増やす。さらに毎日3時間分のコンテンツをアップロードするという約束もしている。

本日配信開始されたオリジナル・コンテンツには、リアム・ヘムズワースとクリストフ・ヴァルツが共演するスリラー映画『Most Dangerous Game』、チャンス・ザ・ラッパーがMCを務めるMTVの人気番組「Punk’d」、LAレイカーズの人気バスケットボール選手レブロン・ジェームズのドキュメンタリー「I Promise」、ジェニファー・ロペスらが1ミリオンドルを一般人に贈与するリアリティ番組「Thanks a Million」、ニコール・リッチーによるバラエティ番組「Nikki Fresh」など、バラエティに富んでいる。

ジェニファー・ロペスらが出演している
ジェニファー・ロペスらが出演している

これらのコンテンツのほかに、マリブの海をリラクゼーション映像に仕立てた「The Daily Chill」や、NBC、BBC、スペイン語圏向けのTelemundo、ゴシップニュースのTMZなどのニュース番組は平日毎日更新される。確かにTurnstyleの技術は高度で、映像を観ながらスマートフォンを縦にしても横にしてもスムーズに映像が切り替わる。最初はおもしろいので縦にしたり横にしたりして観ていたが、例えばシリアスなドラマを観るのに画面を切り替える必要があるだろうか?

Disney+はコンテンツ数が少ないものの、メインターゲットである子どもたちは何度も同じ作品を観る傾向
Disney+はコンテンツ数が少ないものの、メインターゲットである子どもたちは何度も同じ作品を観る傾向[c] Disney, All Rights Reserved,

気に入った作品であれば、1度目は横で2度目は縦というように2度観ることもあるかもしれないが、リアリティ番組やニュース番組を2度観ることはないだろう。言うまでもなく、ストリーミング・サービス成功の鍵はコンテンツである。サービス開始当初はコンテンツ数の少なさに疑問が呈されたDisney+も、同じ映画や番組を繰り返し観る子どもたちにとってはなんの問題も生じなかった。

ベイビー・ヨーダという人気キャラクターも生まれ、ライセンス契約された商品も市場に出回っている。今後開始されるHBO MAXも、Netflixとの熾烈な争奪戦の末にスタジオ・ジブリ作品の配信権を取得している。3か月の無料お試し期間が終わるまでに、Quibiは視聴者の心をつかむことができるのだろうか。アメリカ住民の約3分の2が自宅に留まるいま、ストリーミングの世界でも激戦が繰り広げられている。

文/平井伊都子


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