宮崎駿が息子・宮崎吾朗に「もっと俺をおびやかしてみろ」
スタジオジブリ最新作『コクリコ坂から』(7月16日公開)の完成披露会見が、7月4日に本作の舞台である横浜で開催。長澤まさみ、岡田准一が山下公園で信号旗のUW旗(安全な航海を祈る旗)を揚げた後、宮崎吾朗監督と鈴木敏夫プロデューサーと共に記者会見を行った。宮崎吾朗監督は父・宮崎駿について「すごい人」と称えた後、あふれる思いを語った。
『コクリコ坂から』は高橋千鶴の同名少女コミックの映画化作品だが、舞台を1980年代から1963年の横浜に移し、親子二世代に渡る青春を綴った物語となった。宮崎駿が企画・脚本に携わり、息子の吾朗が『ゲド戦記』(06)に続く監督二作目としてメガホンを取った。宮崎吾朗監督は「本当に公開できるのかと、綱渡り状態でしたが、縁とか運とかに助けられてここまで来れました」と挨拶した。
ヒロイン海役の長澤は、ジブリ映画はもとより、長編アニメ映画のアフレコは初挑戦となった。「小さい頃からジブリの映画が大好きで、まさか自分がジブリの映画の声を演じられるとは。楽しんで海役を演じられました」と笑顔で語った。海と恋に落ちる俊役を演じた岡田は『ゲド戦記』に続いて、宮崎吾朗監督作への参加となった。「『ゲド戦記』で親子二代の話をしちゃった分、今回相当覚悟をしちゃってる分、オファーをいただいた時、本当に僕で良いのかと思いました。『ゲド戦記』の時は、山ほど反省点があったので。だから覚悟を決めて、監督と行くところまで行こうと思いました」。
宮崎監督は「『ゲド戦記』の時は勢いだけだったけど、今回はプレッシャーを感じました。初めてスタート地点に立ったんだという感想で、達成感とやり残したことがたくさんあります」と今の心境を語った。また、父・宮崎駿について「あるテレビのレポーターによると、『もっと俺をおびやかしてみろ』と言ったらしいです。それを聞いて、僕は思わず『死ぬなよ』と答えてしまいました。すごい人なので、追いつけないんだろうと思いますが」とコメント。また「シナリオの中の海ちゃんは、まさにポスターの海ちゃんで、理想の女の子。僕がやると“いそう”な女の子になりました。でも、僕に向いているのはこれなんだろうと。また、普通の女の子が主人公の映画が作れればと」と、感慨深い表情で語った。
宮崎駿と吾朗親子の間に立つ鈴木プロデューサーのコメントも印象的だった。「宮崎駿は、吾朗くんに対して『二本目が勝負。これで駄目だったら監督なんて辞めちまえ』と。試写の時、僕は彼の隣にいましたが、素直に『良かった』とは言わないと思っていました。そしたら第一声が『俺の作った俊はあんな不器用な男じゃない。あれじゃあ、まるで吾朗だ』と」。まさに宮崎親子の関係性と、吾朗監督の人となりを端的に表すコメントである。
親子二代の青春を、宮崎親子のタッグで描いた『コクリコ坂から』。長澤は「この時代に生きている人の一生懸命さや勢いが良くて、正直で素直な人たちがたくさん出てきて、心が動かされます」と語れば、岡田も「ピュアな恋愛もので、恋が始まるふたりを見てキュンキュンとなります」とアピールする。先日、被災地での上映でも好評を博したようで、後は7月16日(土)の公開を楽しみに待つばかりだ。【取材・文/山崎伸子】