心に刺さりまくり!思わず奮い立つ、ブルース・スプリングスティーンの神フレーズ
落ち込んでいるときに、ふと聴いた音楽が自らを奮い立たせた…という経験をしたことはないだろうか?そんな音楽の持つ人の心を動かす力を描いている映画が、現在公開中の『カセットテープ・ダイアリーズ』だ。
本作は、1980年代のイギリスの閉塞的な郊外の街ルートンを舞台に、パキスタン移民である両親を持ち、人種差別や伝統的な家族観といったことに悩みくすぶる青年、ジャベドが、ある音楽と出会ったことから、人生を変えていく物語。彼を変えた音楽というのがブルース・スプリングスティーンの楽曲の数々だ。
「自分が無力に思え爆発したくなる。この町を吹っ飛ばしたい。心の痛みをナイフで切り落としたい」(「プロミスト・ランド」)
このフレーズは、父が不況でクビになり、好きなことである詩を書くことにすら嫌気がさすほど人生に絶望したジャベドがたまたま聴いた「プロミスト・ランド」の一節だ。ブルース・スプリングスティーンと言えば、スターでありながら背伸びをせずに身の回りの等身大な題材を歌い、“ボス”と呼ばれるほど、大衆に愛されているが、この曲でも労働者階級の苦悩を歌っている。
ジャベドは、自らの心の中を言い当てるようなこの曲に出会ったことで、音楽の力を知り、再び詩を書くことを決意する。創造への意欲をかき立てられ、新たな道へ前進するのだ。
「生を謳歌するのは罪じゃないと心の奥で信じる人々よ、俺を無視しないものが欲しい。無視する連中にツバを吐きたい」(「バッドランド」)
ブルース・スプリングスティーンを紹介してくれた友達とレストランで談笑していたところ、レイシストに席をどけと言われたジャベドが、彼らに放つのがこの「バッドランド」のフレーズ。
それまではレイシストに対し、怖気づいて逃げることしかできなかったジャベドだったが「俺たちは闘い続ける。バッドランドが生きやすくなるまで」と力強く訴えかけるこの歌のように、音楽と出会ったことで自らの意思を表明するようになるのだ。
「欲しければ、つかめ。代償を払え」(「暗闇へ突走れ」)
ブルース・スプリングスティーンと出会ったことで、好意を寄せる女の子、イライザといい関係になりデートをするまでに、人生に光が差してきたジャベド。デートの夜、あと一歩が踏み出せないなか、門限の時間が来てしまい、帰ろうとヘッドホンを耳にかけたときにこの一節が聴こえてくる。恋を歌った「暗闇へ突走れ」のこの歌詞に心を奮い立たせた彼は、彼女の元へ戻り、そして勇気を出して彼女と唇を重ねるのだ。
人間の様々な感情に寄り添い、心に突き刺さってくるブルース・スプリングスティーンの神フレーズたち。ぜひ劇場でその歌声を耳にして、そのアツい想いに魂を震わせてほしい!
文/トライワークス