『ロック わんこの島』の麻生久美子が奔放な母ちゃん役で新境地!
2000年の三宅島大噴火によって、離れ離れになった犬と少年、家族の絆を描いた『ロック わんこの島』(7月23日公開)。本作で、自由奔放な明るさで楽しませてくれるのが、家族のムードメーカー的存在の母親・貴子役を演じた麻生久美子だ。今回、そんな彼女にインタビューを敢行。自身が「私っぽい」と語る役柄や子役との共演、愛犬家ならではの犬の魅力についてたっぷりと語ってくれた。
麻生にとって小学生の子供がいる母親役は本作が初となる。家族に愛情を注ぎ、コミカルな面も見せながらも、強さを内に秘めた母親の姿を見せるあたりはさすがだ。しかし、役作りについては、監督から「シーンごとに全部違う人に見えるような人で良い』と言われたそう。なかでも映画の冒頭に叫ぶシーンでは、“麻生久美子があんな声を出すなんて!”と誰もが驚くはずだ。
「台本には叫ぶとは書いてなくて、現場で監督から『ここでウォー!って叫んで』って言われても、『またまたご冗談を(笑)』と思ったんです。でも監督の目は本気で、しかも『野太い声で』って。あのシーンを試写で見た時は、ものすごく恥ずかしかったです(笑)。貴子は厳しいけど愛情深い母ちゃん。映画を見終わったら、私の母に似てることに気づきました。私も母親になったら貴子みたいになるんだと思います」。
そんな貴子が愛する息子・芯を演じた土師野隆之介について、「純朴な可愛い子で、素晴らしい演技をする」と絶賛! 土師野の演技が光るのは、子供だけを先に東京に避難させるというシーン。息子を手放す母親、そして家族から離れたくないと泣き叫ぶ芯。そんな芯にやがて貴子が駆け寄る。麻生は「あのシーンは大変だったんです」と振り返る。
「監督からは『芯のところに駆け寄りたいという気持ちになるまで動かないでください』と言われたのですが、『フィルムで撮っているし、お金が…』なんて余計なことを考えたりもして(笑)。でも、『本当にその気持ちになるまで動くまい』と思っていたら、そのまま一日終わっちゃったりしたこともありました。しかも土師野君の顔の表情が見えない位置だったので、彼の声のお芝居だけを聞いていました。感情が乗った時の土師野君のお芝居は素晴らしいんです! 私は彼に恋していましたね。ウチの子になってほしいなって思ったくらいです(笑)」
また、本作で欠かすことのできない重役を担った俳優が、ゴールデンレトリバーのロックだ。私生活でも犬を飼っている麻生に、ロックとの共演の感想も聞いてみた。「とても賢い子で、ウチの子と比べちゃうとすごいな!と思って毎日見ていました。犬って信頼している人の目をいつも見ているんですよね。私は犬のそういう顔が好き。撮影中、ロックは土師野君といることが多かったので、土師野君の言うことは聞いていて、その信頼関係はすごいなと思いました」。
今年3月に起こった東日本大震災後、偶然とはいえ、三宅島の自然災害に遭った人々の物語を描いている作品の公開という点は、ややナーバスになりがちだが、その点についてはこう語った。「生まれ育った場所って誰にとっても特別な場所だと思います。私も育った千葉にもう帰っちゃいけないと言われたら、すごく胸が痛いです。震災の被害に遭われた方々には、どんなふうに受け止めてもらえるかわかりませんが、見た方それぞれにいろんなことを感じてもらいたいです」とその複雑な心境を語った。
劇中、三宅島から避難した家族は何度も辛い現実に落ち込みそうになるが、そんな時は貴子の必殺技「アチョー!」が炸裂。貴子の明るい笑顔が家族を支え、避難生活を乗り越えていく。色々な表情を持った母親役で新境地を開拓した麻生久美子の演技を是非劇場で堪能してもらいたい。【取材・文/鈴木菜保美】