堺雅人は人気がない? 原作者ゆかりの地で『日輪の遺産』ジャパンプレミアが開催
終戦間近の昭和20年を舞台に、軍の密命を受けて過酷な任務に取り組むことになった将校と20人の少女たちの姿を描いた歴史ミステリー『日輪の遺産』(8月27日公開)。そんな本作のジャパンプレミアが、終戦記念日の8月15日にワーナー・マイカル・シネマズ新百合ヶ丘で開催され、堺雅人、森迫永依らキャスト陣と佐々部清監督、そして原作者の浅田次郎が登壇した。
本作品の原作を執筆していた当時、浅田は米軍の施設や旧日本軍の弾薬工場が残る東京都稲城市に住んでいたそうで、そんな思い入れのある稲城市から、ほど近い新百合ヶ丘でジャパンプレミアが行われたことについて、「稲城市に住んでいた頃、近くの山までよく散歩に行っていたんですけど、そこには旧日本軍の工場跡や防空壕として使われた洞窟、どこにつながっているのかよくわからない煙突など、戦時中を思い起こさせる施設がたくさん残っていました。もちろん、中には入れませんでしたが、フェンス越しにそれらを眺めているうちに、小説として使えそうなアイデアを色々思いつくことができました」と、喜びのコメントと共に、当時の思い出話を語ってくれた。
続いて、主人公である陸軍少佐・真柴を演じた堺は、「8月15日という特別な日に、浅田先生の思い出の詰まった特別な場所で、ジャパンプレミアという特別なイベントを行えることを、とても嬉しく思います」と挨拶し、本作の語り部でもある女学生・久枝役の森迫は、「映画には、堺さんの他にも、福士誠治さんと中村獅童さんが軍人役で出演されているんですけど、女学生役のみんなの間では『3人のなかで誰が一番格好良い?』という話題でもちきりでした」と、撮影時の裏話を語ってくれた。ちなみに一番人気は、望月曹長役の中村だったそうで、堺は「実はうすうす気づいていました(笑)」とコメントし、会場は笑いに包まれた。
また『出口のない海』(06)や『夕凪の街 桜の国』(07)など、これまでにも戦争を題材にした作品を数多く手がけてきた佐々部監督は、「助監督時代から『いつか浅田先生の作品を撮ってみたい』とずっと思っていました。監督作10本目という節目に当たる作品で、その夢を実現することができて本当に嬉しいです」と、本作に込めた熱い思いを語ってくれた。
激動の時代に翻弄される人々の姿を通して、戦争の愚かさや悲愴さをリアルに映し出した『日輪の遺産』。だがそこには、悲しみだけでなく「どんな困難に直面しようとも、勇気と希望をもって乗り越えていこう」という力強いメッセージも込められている。日本全体が、終戦直後同様に復興へのスタート地点に立っている今こそ、本作を見て、新しい一歩を踏み出す活力を得てほしい。【六壁露伴/Movie Walker】