岡田将生、榮倉奈々らがモントリオール世界映画祭で「今の日本を象徴している映画」
さだまさしによる原作を映画化した『アントキノイノチ』(11月19日公開)が、開催中の第35回モントリオール世界映画祭のワールド・コンペティション部門に正式出品され、現地時間8月19日、出演者の岡田将生、榮倉奈々と、瀬々敬久監督が記者会見、次いでプレミア上映会に出席した。
記者会見の質疑応答で、本作のテーマに「なぜ、命と精神的暴力を盛り込んだのか?」と問われた瀬々監督は、「2000年代に入って最大の悲劇は9.11があると思います。復讐から復讐へつながるという社会になっていきました。厳しい現実、暴力的な世界がありますが、そういう中でもより良く生きたいと常に思っていますし、実際に生きていこうと思っているのが人生だと思います。これからは憎しみの連鎖がつながるのではなく、命がつながっていくことをテーマにしたいと思いました。一方で暴力を描かなければ、もう一方の命のつながりが見えないと思い、本作の中では暴力も描きました。最終的に映画で描きたかったのは、新しい生が誕生すること、命が次の世代につながっていくこと、より良く生きていくにはどうしたらいいかを探っていこうとした作品です」と本作を紹介した。
これまでの日本ドラマでは、言葉で色々伝えようとしているように見えたが、本作ではあまり言葉を使わず、言わないことで何かを伝えようとしているに見えたという質問者。そのことに関し、苦労があったのではないかと質問を受けた岡田は、「今回は心が傷ついた青年役で、言葉に出せない役柄でもあり、とても苦労しました。僕の表情で伝わっているのかどうか、毎日毎日監督に確認していました」と明かし、榮倉は「言葉での切り返しが多い子供や家族で楽しむコメディドラマは、一つのエンタテインメントとして、私自身も大好きです。でも、やっぱり自分たちの生活の中では、育った環境や今ある状況によって同じ単語でも違った意味に伝わることはあると思いますし、言葉や行動が全てではないと思っています。だから、たくさんの人に伝えるのはすごく難しかったですが、監督やプロデューサーの中に伝えたいことの芯があったので、それを信じてやっていきたいと思いました」と振り返った。
プレミア上映会後、岡田、榮倉、瀬々監督がフランス語や英語などで挨拶。一年以上前となる本作の企画時からこれまでを、平野隆プロデューサーは、「この映画は、結果的に今の日本を非常に象徴しているような映画になっていると思います。3月11日の震災によって、何十万の人々が家を失い、愛する人を失って、その後、彼らが瓦礫の中から遺品を必死に探し出す姿を見ると、大変胸が痛みます」と心境を吐露した。
本作に目を通した人々からは、「この映画における孤独や死についての考え方が良かったと思います。(演出の面では)静寂な場面もあり、登場人物の感情がゆっくりと移り変わっていく様が素晴らしかった」「生と死の側面をうまく表現している」など高評価を得た。【Movie Walker】