故・林由美香の元恋人、平野勝之監督『監督失格』完成に「人生に句読点を打てた」
35歳の誕生日前日に夭折したた女優・林由美香を14年間追ったドキュメンタリー『監督失格』(9月3日TOHOシネマズ六本木ヒルズ先行公開、10月1日全国公開)の音楽を担当した矢野顕子、プロデューサーの庵野秀明と、平野勝之監督が記者会見を行った。
林の元恋人であり、仕事仲間でもあった平野監督。本作は11年ぶりの監督作品となる。林が死去してから6年、「本当は10年後、20年後に人生の最後の作品として作ろうと思っていたのですが、『まずはこれを作り上げよう』と思いました。お葬式ではないが、今は儀式として人生に句読点を打てた気がします。由美香には笑いながら『監督失格だね』と言われると思います」と心境を吐露した。平野監督とは旧知の仲でもあった庵野プロデューサーは、本作参加への経緯を、「平野さんと何年かぶりに飲んだ時、もう作品は作れない感じになっていて。その辛さはよくわかるが、何としても平野さんに一本作ってほしいと思いました。とにかく力になりたく、今は『できあがって良かった。映画を見て良かった。本当に良かった』という気持ちでいっぱいです。平野さんと初めて仕事をして、我の強さと自己愛の強さに、『自分の好きなようにやって良いんだ!』と勇気づけられました」と感謝を述べた。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』総シリーズ監督を務める庵野プロデューサーは、クチコミで広がる作品の宣伝戦略を行うことについて、「宣伝に関しては予算の関係ですが、できる宣伝は全てやっていますし、クチコミが大事なのかなと。インディーズ作品がシネコン、しかも六本木で先行公開されるというのは、こういう映画だからこそ突破してみたいという夢のようなものでした。こういうインディーズの映画が、そういうところで上映されるということで、一歩前進できたかな。成功すればさらに広がると思うので、これからの映画のためにも成功させたいです」と意気込みを語った。
「音楽はとにかく矢野さん以外に考えられなかった。歌詞が簡潔なのに心臓を鷲づかみにされる。そして普遍的なところが10代の頃から好きでした」と話す平野監督からオファーを受け、主題歌を書き下ろした矢野は、「音楽を作るしかなかったのです。このふたりのために」と音楽を担当した。「映画のことも、監督のことも、由美香さんのことも知らなかったので、とにかく作品を見て、『これはもう私ができることで何かをお返しせねば』という気持ちなりました。平野監督と由美香さんがその時にどういう気持ちでいたのか。音楽もそれに沿うように作りました」と振り返った。完成した矢野の楽曲「しあわせなバカタレ」を耳にした平野監督は、「最初に主題歌のタイトルと歌詞を読んだ瞬間、笑いながら泣きました。矢野さんにはお伝えしていなかったのですが、自分の中でのキーワードが“幸せ”でした。“自分のこと”である本作の最後に、出口を作ってくれました」と絶賛した。矢野による本作の主題歌「しあわせなバカタレ」は、iTunesにて先行配信中だ。【Movie Walker】