まるでCG! 驚異的な映像の撮影を可能にした最新技術とは?
美しく雄大な風景や、そこに息づく生命の姿を鮮やかに映し出すネイチャードキュメンタリー。自然の神秘さを堪能できる内容はもちろんだが、このジャンルで面白いのは撮影技術ではないだろうか。あまりに精緻すぎて、CGにしか見えない映像、ありえないほどの被写体との近さ、まるで動物がカメラに合わせて動いているかのように感じられるカメラワークなど、いったいどのように撮影しているのか、舞台裏を想像するだけでワクワクしてしまう。同系統の作品が数多く製作される近年は、独自の個性を打ち出すための熾烈な競争が展開されており、最先端のテクノロジーを惜しげもなく投入して撮影した映像を楽しむことができるようになっているが、そんな中でも最高峰の技術の成果を楽しめるネイチャードキュメンタリーが、9月1日(木)より公開中の『ライフ いのちをつなぐ物語』だ。
本作は『ディープ・ブルー』(03)や『アース』(08)など、数々の優れた自然ドキュメンタリーを生み出してきたイギリスBBCが製作。これまでの作品との違いとして“動物と同じ目線”にこだわって自然の姿を描いていることを強調しているが、その映像を実現させるために数々の技術が駆使されている。
まず、新たに開発された撮影装置のヨギカム。本来は空中撮影に使用されるステディカムを動物追跡用のオフロード車に天秤式アームで取り付けたもので、まるで行進するアフリカゾウの群れの一員になったかのような斬新なアングルの映像を生み出すことに成功している。また、動物の生態をこと細かに映し出す超ハイスピードカメラを導入。自然ドキュメンタリーでのスローモーション映像は定番にも思えるが、1秒間に8000コマという通常の4倍を誇る記録数でとらえた映像は、これまでのスローモーションとは完全に別ものと言っても良いだろう。さらに、素早すぎてとらえることができなかったというバショウカジキが小魚の群れに突撃する様子も撮影した。これはカメラ専用の特製ボックスを設計・設置し、80倍のスローモーションを用いることで初めて成功したものだ。他にもハイビジョンマクロカメラなどを用いており、ほとんどのエピソードで世界初の映像が含まれているというから驚かずにはいられない。
もちろん、機材面が充実しているだけで良い画が撮れるわけではない。行動が予測不可能な動物を相手に、決定的な瞬間を収めるには想像を絶するような忍耐力が必要であり、背後には撮影クルーの血のにじむような努力が隠されているのだ。その奮闘ぶりは撮影日数3000日という、膨大な労力が費された数字からも明らかだろう。
撮影技術や機材などのテクノロジーは日進月歩で、これまで困難だった場所での生物の生態を明らかにしてくれており、今後どこまで進化するのか楽しみなところだ。まずは現時点での新技術の粋を集めた『ライフ』を、大スクリーンで鑑賞できるチャンスを逃さないでほしい。【トライワークス】