困難だからこそ挑戦したい! 小出恵介が『スイッチを押すとき』に込めた思いとは
人気作家・山田悠介の同名小説を映画化した近未来が舞台のサスペンス『スイッチを押すとき』(9月17日公開)。そんな本作で、施設に収容された子供たちを絶望へと追いやる謎の看守・南洋平を演じるのが、『ROOKIES 卒業』(09)をはじめ、数々の話題作に出演する若手演技派の小出恵介だ。今回は小出に、自身の演じた役柄に対する思いや撮影時のエピソードについて語ってもらった。
これまでにも、漫画や小説が原作の映画に数多く出演してきた小出だが、役作りには独特のこだわりがあるという。そんな彼が、本作への出演を決意した理由とはいったい何なのだろう? 「もともと小説や漫画を読む時、登場人物になりきって『もし自分がこのキャラクターだったら、どんな行動をするだろう?』って考えながら読むクセがあるんです。山田悠介さんの作品は今回初めて読ませていただいたんですけど、世界観が独特ですね。それに登場人物も、一筋縄じゃいかないクセの強い奴ばかり。だからこそ演じ甲斐があると思ったので、オファーが来た時は挑戦的な気持ちで引き受けさせていただきました」。
今まで挑戦したことのない特異な主人公・南を演じてみて、どんなことを感じたのだろうか? 「想像以上に難しい役柄でしたね。南洋平という男は、年齢は僕と近いんですけど、長い間、特殊な環境で育ってきたため、感情に欠落している部分が多いんです。ストーリーが後半に進むにつれ、少しずつ感情が露になっていくんですけど、どういった表現方法なら南の心情を的確に見せることができるか? 色々模索しながら人物像を作り込んでいきました。かなり大変だったけど、僕自身、楽しみながら取り組ませてもらいました」。
とはいえ、重たい雰囲気の世界観で役を演じ続けるのは、精神的にもかなりきつかったようだ。「撮影期間中は、家に帰っても役が抜けなくて、ずっと重い気分を引きずり続けていました。この手の作品って、物語の世界観を自分の中にキープしておかないと、キャラクターを維持できないんですよ。でも、それは映画に出演するうえでの宿命だし、“演じる”ことの楽しみでもあると思っています。ただ、一人でいるとだんだん暗い気持ちになってくるので、友達に片っ端から相談メールを送ったりしました。今回の撮影中は、松山ケンイチ君から励ましの返事をもらいました(笑)」。
これまで“若手俳優”というカテゴリーでとらえられてきた小出だが、今作では、自分よりもさらに若い世代の俳優たちと共演を果たしている。一人の俳優として、撮影時はどういった心境だったのだろう? 「若い子どうしはすぐに打ち溶け合って、みんな楽しそうにしていたんですけど、僕は年が離れていたので、ちょっと輪に入りにくかったですね(笑)。演技に違和感が出ないようコミュニケーションは取れたと思うんですけど、今後、自分より若い世代との共演も増えてくるだろうから、彼らともガチッはまった芝居ができるよう、もっと勉強していかないといけませんね」。
そんな小出にとって、映画に出演し続ける理由とは何なのだろうか? 「僕が出演することで『作品がほんの少しでも良くなれば』『世の中に対し影響力のある作品になれば』という気持ちで、毎回取り組んでいます。それと“演技”を追求し続けたいという思いも、僕が映画に出演する理由の一つですね。演技って『こうするのが正解』みたいな答えがなくて、日々、変化していくものなんです。だから、自分で限界を決めてしまえば、そこが終点になってしまうんだけど、もっと知ろうと足を踏み入れていく限り、永遠に終わりがないんです。『挑戦し続けることで、いつか自分の想像のつかない境地にたどり着きたい』という気持ちで、毎回、いろんな役に挑戦させてもらっています」。
最後に、これから本作を鑑賞する方たちに向けて、作品の見どころを話してもらった。「高校生の頃、『バトル・ロワイアル』(00)を見て、すごく衝撃を受けたんですけど、『スイッチを押すとき』はそれに負けないくらい、ものすごく刺激的な作品に仕上がっています。お客さんには、僕がかつて受けたのと同じくらい強烈な衝撃を感じてもらいたいですね。色々考えたりせずに、一つのエンターテインメント作品として楽しんで見ていただければと思います」。
二転、三転するストーリーや過激な暴力描写など、衝撃的な要素を多数盛り込みながら“生きることの意味”を映し出した意欲作『スイッチを押すとき』。本作鑑賞時は緊張感あふれるサスペンスを楽しみながら、そこに込められた深いテーマも意識することで、物語をよりいっそう楽しむことができるはずだ。【六壁露伴/Movie Walker】