『ツレうつ』の夫婦役・宮崎あおい&堺雅人「うつ病に二人で向き合う夫婦が素敵」

インタビュー

『ツレうつ』の夫婦役・宮崎あおい&堺雅人「うつ病に二人で向き合う夫婦が素敵」

細川貂々(てんてん)の人気エッセイ・コミックを映画化した『ツレがうつになりまして。』(10月8日より公開)で、大河ドラマ「篤姫」に続き、再び夫婦役を演じた宮崎あおいと堺雅人。再共演した二人にインタビューし、お互いに感じる確固たる信頼感から、うつ病に対する考えの変化、今の人生観について語ってもらった。

漫画家の晴子と、うつ病になったツレが二人三脚で病気と向き合い、暮らしていく日常を、『半落ち』(04)の佐々部清監督がユーモラスで温かな視点から撮った本作。晴子役の宮崎が「堺さんとは『篤姫』以来久しぶりの共演で、しかもまた夫婦役ということで、最初から安心できたし、すごく心強かったです」と言うと、ツレ役の堺も「病気の役だとどうしても不安定になってしまいがち。でも宮崎さんとの共演だったので、絶大なる安心感が持てました」と、お互いへの信頼感を口にした。

二人が演じた夫婦像については「すごく素敵です」と、口を揃えた。宮崎が「どの夫婦もいろんな問題があるけど、この夫婦はうつ病という壁にぶつかっても、二人で力を合わせて向き合っていく。すごく素敵だなと思いました」と静かに語ると、堺も同意。「夫婦の完璧な理想像があったとして、全てをそこに近づけるんじゃなくて、今ある関係性、今ある自分たちの手持ちの材料を上手く使いこなしながら、何とか一歩でも良い方向へ行こうとする。それってすごく成熟した大人の関係のような気がします」。

本作に出演したことで、うつ病のとらえ方も少し変わったという二人。堺は語る。「うつ病って、もちろん病気なんですが、今までは自分とは反対側にあるものだと思っていたんです。でも、実は地続きで、対岸の火事じゃなくて、誰でもなりえるんだなあと」。宮崎は「私はそんなに特別なものという意識はなくて。ただ今回、うつ病を完治させるのではなく、どうつき合っていくかという選択肢があるんだなあと思いました。治そう治そうってことだけが答えじゃないんだと」と言う。

劇中で、アンティークの小物について「割れなかったからここにある」と感慨深く晴子がつぶやくセリフが印象的だ。堺は「大事なセリフですよね」と言葉をかみしめると、宮崎もうなずく。では、二人に、割れないでいるための秘訣を聞いてみた。堺は「僕は自分に甘いんです」と笑顔を見せた。「ずっとこの仕事をやってきて、満点をすぐ下げることができるようになってきた。それが恥ずかしいことじゃなくなってきた気がするんです。晴れの撮影で雨が降っても『雨の芝居を考えようよ』って言えるようになった。その臨機応変さは、年の功かな。だんだん楽になってきて、仕事が好きになってきました」。

宮崎は考えながら、こう答えてくれた。「今まではわりと勘に頼るというか、なるようになると思って生きてきたけど、25歳になったくらいからはいろいろと考えて自分の道を決めていかないといけないなって思うようになってきました。だから今、どう割れないでいられるかを考えます。誰しもがたぶん簡単に割れてしまうと思うので。やっぱり、甘えられる場所を作ることですね。家族だったり、友達だったり、弱音を何でも吐けるところが1個あるとまた頑張れるかなって」。

宮崎あおいと堺雅人が織り成す夫婦像には、コミカルでほのぼのとした中に、人間臭い弱さもちゃんとにじみ出ていて、大いに共感を呼ぶ。二人が丁寧につむいだリアルな夫婦の軌跡のドラマは、ハンカチ必携で臨みたい。【取材・文/山崎伸子】

※「崎」の漢字は正式には旧字となります。「大」が「立」になります

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