妻夫木聡が石井克人に激白「あの衝撃シーンは本当に怖くて痛かった」

インタビュー

妻夫木聡が石井克人に激白「あの衝撃シーンは本当に怖くて痛かった」

妻夫木聡が長年ラブコールを待ち続けた石井克人監督の最新作『スマグラー おまえの未来を運べ』(10月22日公開)に主演。「闇金ウシジマくん」の真鍋昌平の同名人気コミックを映画化した本作は、ハイパーな石井ワールド炸裂の快作となった。そこで、主演の妻夫木と石井監督にインタビューし、初顔合わせの感想から、衝撃のあのシーンまで語ってもらった。

「スマグラー」とは、依頼されたヤバイブツを運ぶ裏社会の運び屋のこと。『悪人』(10)で心に闇を持つ青年役で高い評価を受けた妻夫木が、本作では冴えない25歳のフリーター、砧涼介役に見事になりきった。砧は多額の借金を返済するため、スマグラーの一員となる。妻夫木は「石井組に参加できて嬉しかったです。一日、一日、終わる度に充実感みたいなものがある現場でした」と満足気に語った。石井監督は妻夫木について「大人だし、冷静ですね。すごく男らしい。自分で運転して現場に入ってくるんです。あまり周りにはいないタイプ」と彼の男気に感心した様子。

妻夫木が予想以上に砧役にはまったことにも驚いたという石井監督。「『悪人』を見た時、無茶苦茶良い体をしてたので、砧とはちょっと違うかなって思ったりしたけど、現場に来たら全然雰囲気が違って、ほわんとした可愛い感じになっていた(笑)。駄目なヤツって感じもちゃんと出ていたんです」。妻夫木はわざと不規則な生活をして、砧役に入り込んだ。「どんよりとしていたくて不摂生をしてました。寝なかったし、ご飯も外食ばかりで、ジャンクなものばかりを食べてましたね」。

砧は松田優作ファンという設定である。「監督のキャラ表にそうあったから、家や現場で松田優作さんの作品ばかり見てました。松田優作集みたいなものまで買っちゃったし。撮影が終わった瞬間、役から抜けたいと思ったので奥に仕舞いましたが。たぶん僕の家に来たら『ああ、松田優作が好きなんだ』って思うでしょうね(笑)」。

砧が高嶋政宏扮する河島からいじめられる衝撃のシーンが強烈だ。石井監督によると「高嶋さんから色々と提案をもらいました。羽のコスチュームとかは僕が考えましたが。地下でやっているように見えるけど、スタジオの端の荷物置き場みたいなところで撮りました」とのこと。妻夫木は「あそこに行くのが怖かったです。しかもつながりがあるので、ずっと座ってなきゃいけなくて。冬ですごく寒い時期だったので大変でした」と語った。

いじめられるといっても、あくまで芝居上だが、実際に痛い思いをしたという妻夫木。「僕、痛みにはわりと強い方で、足ツボとかに行っても痛え!って言うけど、意外と嫌いじゃないんですよ(笑)。でも、あのシーンは冷静さを装いつつも、とんでもない痛さにビビってる砧もいるってことで、そのバランスが難しかったです。また、高嶋さんの芝居が良くて、僕も良い芝居を引き出してもらえました。まあ、リアルに痛かったし、怖かったのもありますが。後から映像を見るとすごく笑えるけど、その場では全然笑えなかった(笑)」。石井監督も「スタッフが、これはホラーコメディなのか、コメディホラーなのかどっちだろう?って言ってたね」と苦笑い。

完成した映画について、石井監督は「役者さんのお芝居は大満足です」と太鼓判を押す。いつも自分の演技には駄目出しをしてしまうという妻夫木は「反省点ばかりでした」と言いつつも、石井監督の世界観を絶賛。「今までとは違う石井ワールドみたいなものが、すごくスマートに感じました。原作や台本で書かれている以上の人間味が出ていたから。久しぶりに爽快感を感じた映画でした」。まさに役者と監督、相思相愛な感じがする。ふたりの最強タッグによるパワフルで刺激的な石井ワールドを目一杯堪能して。【取材・文/山崎伸子】

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