妻夫木聡、旧知の永瀬正敏と安藤政信との現場で距離感に戸惑う
妻夫木聡が「闇金ウシジマくん」の真鍋昌平の同名人気コミックを映画化した『スマグラー おまえの未来を運べ』(10月22日公開)に主演。監督は彼が長年オファーを待ち続けていた石井克人で、キャストが長年共演を望んでいた永瀬正敏や、『69 sixty nine』(04)以来の共演となった安藤政信ということで、妻夫木は気合十分に現場に臨んだ。そこで妻夫木と石井監督にインタビューし、楽しかった現場について語ってもらった。
妻夫木扮する砧涼介は、冴えない25歳のフリーターで、多額の借金を返済するために、ヤバイブツを運ぶ裏社会の運び屋「スマグラー」の一員となる。スマグラーのリーダー・ジョー役を演じた永瀬正敏とは、初共演ながら旧知の間柄だった。「永瀬さんには10年以上前から良くしてもらってて、いつか映画でご一緒したいと思ってたから、今回共演できてすごく嬉しかったです。ただ、現場では最初の距離感をどうしたものかなと悩みました。ジョーと砧ということで、(役柄上の関係で)コミュニケーションをとるのを一切やめようと思っていたので。そしたら、永瀬さんはめちゃくちゃ気を遣う優しい人だから、自分から寄ってきてくれました」。
さらに「永瀬さんがジョー役ですごく良かったです」と現場を振り返る。「永瀬さんだったから僕の芝居も変わったし。特に終盤から、永瀬さんからにじみ出る温かさがジョー自体に出ていたので、芝居的にもかなり助けられました」。
伝説の殺し屋・背骨役の安藤政信とも距離感を保つのが難しかったそうだ。「背骨とは一瞬だけど、密度の濃い芝居があったから、近すぎてもいけないなと。でも、安藤さんの近くにいくと、すぐに仲の良い自分に戻ろうとしちゃって。お互いに目とかを合わさないようにしてました(笑)」。安藤については「昔から何も変わらない」と言う。「良い意味でずっとマイペースで、ストイックだし、不器用ですよね。そういう安藤さんを見てると可愛いなって思っちゃう。ずっとそのままでいてほしい。生き方が本当に自由なんです。あそこまで自分ってものを持ち続けることってなかなかできないですから」。
石井監督は妻夫木と仕事をした感想をこう語った。「スターだなって。光ってましたよ。また、今回は全然本読みをせずに本番に入ったんですが、いろんな役者さんとやる中で、それに対しての反応がちゃんと砧の反応になってる。すごいんです。それは芝居というよりは、本人が成りきってないとできないことだったりするので」。
妻夫木も石井監督については手放しで「天才です」と絶賛。「発想が違うんです。殴るシーンも、漫画のまま撮ったら確実に残虐になるし、映倫の審査も通らない。いろんな難しさがある中で、石井さんならではのアイデアや撮影方法には驚嘆しました。アクションシーンをハイスピードカメラで撮影したのですが、演じていてどう撮れているかわからなかったんです。それが、チェック用の映像を一緒に見たら、人の顔の表情の変化が明確に出ていて、とても面白くて斬新だった。すごい発想ですよね。普通は平均点を求めるところからスタートするんだけど、そのスタートラインが全然違うんです。まさに石井さんならではの世界観です」。
また、石井組に参加したいですか?と聞いたら「はい!もちろん」と即答する妻夫木。「1シーンでも良いので出してほしい。我修院(達也)さんみたいな役でも全然良いですし(笑)。痩せろっていわれたら痩せるし、太れと言われたら太ります」。すると石井監督が「怖い役とかどうかな。背骨みたいな役もありかなって思いました」と言っていたので楽しみだ。とはいえ、まずはふたりの渾身のタッグ作『スマグラー おまえの未来を運べ』で、パワフルな石井ワールドを存分に味わって。【取材・文/山崎伸子】