原田知世、初共演の小林聡美と「ふたりきりの芝居で達成感を感じた」
女優として、歌手として、常にしなやかな存在感を魅せてきた原田知世が、小林聡美主演作『東京オアシス』(10月22日公開)に出演。原田は以前から、『かもめ食堂』(06)、『めがね』(07)など、小林主演の作品群が大好きだったということで、今回の出演を快諾したという。小林と初共演して、現場でとても充実感を味わったという原田に、撮影秘話や、今の女優としてのスタンスを話してもらった。
2人の監督と3人の脚本家が手掛けた『東京オアシス』は、東京という場所で自分探しをしていく物語だ。彼女が演じたのは、小林扮する女優・トウコが、ミニシアターで再会する知り合いのキクチ役。キクチは脚本家になる夢を捨てきれずにいるという設定だ。「キクチは、自分の中で疑問が生まれたまま歩むことができなくて、足を止めている女性。そういうことは、自分自身もこれまでに経験しましたし、きっとこれからもあると思うので、とても共感できました。彼女はトウコさんとの再会によって、何か踏み出すきっかけをもらえるんです」。
小林とは初共演となったが、ふたりとも、ほぼ1シーン1カットの長回しの撮影だったから、とても大変だっという。「現場に入って『セリフが多いですよね』っていう会話からスタートし、メイク中や撮影準備中もずっとふたりでセリフ合わせをしていました。ここで頑張らなきゃ、という思いは、きっと聡美さんも感じていたんじゃないかな。本番では不思議と、とても集中できました。スタッフの皆さんも、私たちが集中できるような環境を作ってくださったので、まるでふたりきりになったような気持ちでお芝居ができたんです。だから1テイクでOKが出た時は達成感を感じました。短い時間だったけれど、聡美さんをぐっと近くに感じることができました」。
ふたりは同世代だし、キャリアを10代からスタートさせ、今も女優として揺るぎないポジションにいるという共通点がある。原田は小林をどう見ているのか。「聡美さんはいつも自然体で、良いお仕事をされている姿がすごく素敵だと思っていたので、今回やっと共演する機会が巡ってきて、とても嬉しかったです。実際、お会いしても、女優さんである前に、ひとりの人間としてしっかりと歩んでいらした方だと思いました。やっぱり長くやっていくと、そういうことが一番大事だと感じるので。聡美さんは流されることなく、自分のペースでしっかりとやってらっしゃると。また、一緒にいて楽ですし、構えないでいられたというか、そういう空気を回りに与えてくれる方でした」。
現場の空気感もすごく気持ちが良かったと語る。「とっても和やかでした。私の場合、映画というと、監督の大きな掛け声が入るすごい緊張感の中に、たくさんキャストやスタッフがいるという現場からスタートしたので。でも、だんだん監督やスタッフに年下の方が増えていく中で、もっと自由に、物作りを楽しみながら良い作品を作ろうという現場も素敵だなって思うようになりました。特にこの作品のチームは、私が一番理想とする映画作りをされているなって。すごくシンプルで、映画に対する思いもピュアで、無駄がないんです」。
最後に柔和な表情で、映画に対する思いを語ってくれた。「人生の中で日々、いろんな発見がありますよね。映画もその1つで、何かを吸収したり、感じたり、発散したりすることができる場所だと思うんです。役者としてというよりも人として、役柄や物語について考えたりと、とても良い時間をもらえますし、そこでの出会いもたくさんあります。そういうことが楽しくて。今後も一期一会を大切にしていきたいです」。【取材・文/山崎伸子】