吉高由里子の突拍子もない行動にソル・ギョングがドン引き!? 行定監督は爆笑
韓国、日本、タイの3人の監督が釜山を舞台に撮ったオムニバス映画『カメリア』(10月22日より公開)。その1編『Kamome』に主演したソル・ギョングが来日。ギョングと、メガホンをとった行定勲監督にインタビューを敢行した。国境を超え、すっかり意気投合した二人が、ヒロイン役の吉高由里子との撮影秘話を聞かせてくれた。ソル・ギョングは吉高の女優としての存在感をほめ称えながらも、彼女の突拍子もないある行動に一瞬ドン引きしたというエピソードを暴露し、監督も大爆笑。さて、その内容とは?
2010年の釜山国際映画祭でクロージング上映された『カメリア』は、『Kamome』の他、タイのウィシット・サーサナティヤン監督の『IRON PUSSY』、韓国のチャン・ジュナン監督の『LOVE FOR SALE』の3編で構成される。『カメリア』は、ベテランの撮影監督パク・ヨンス(ソル・ギョング)と、カモメと名乗る日本人の少女(吉高由里子)との出会いを叙情豊かに綴った物語だ。行定監督は『ペパーミント・キャンディー』(00)や『オアシス』(02)のギョングの演技に心酔していたので、今回彼と仕事ができたことにとても感激したそうだ。
ギョングは、行定監督の演出の“間”がとても心地良かったようで「行定監督は、ゆったりとしたテンポで、息遣いが感じられるような演技ができるようにしてくださった」と笑顔で語った。行定監督は「もっと現場で議論するだろうと覚悟をしていたんですが、全然違いました」とのこと。「彼が、『Kamome』の脚本や演出には、日本人が持つ情緒が出ていると言って、それを一字一句変えないんです。通常、情緒なんて無意識に要求しているのですが、彼にそれを聞いてから、僕はものすごい緊張感と喜びの中で撮影をしてました」。
「情緒は、映画の根底に流れているもの」というギョング。行定監督は「自分の映画の中にソル・ギョングがいて、しかも自分が思い描いてる画を現実的に体現してくれた、いや、それを超越してくれた。だから、この映画が好きなんです。僕、自分の映画を好きだって発言はほとんどしないんですが」と目を輝かせる。
劇中の吉高由里子は役名どおりカモメのように浮世離れしている。彼女のキャスティングについても行定監督が教えてくれた。「韓国に乗り込んで、ソル・ギョングと共演できる女優となったら、のりしろがある人間で、すごく衝動的な人間が望ましいなと。吉高はそれに見合う女優なんじゃないかと思って。撮影が始まると、彼女をできるかぎり放置しました。そうすることで吉高が役柄同様にソルさんに入り込んでいくから。ソルさんはそれを受け止めるスキルを持ち合わせているので。また、彼女のリアクションで、ソルさんの演技も変わっていきました。二人が合わせ鏡になるというか。あんな贅沢なことないですね」。
ギョングは吉高について「吸引力の強い女優」と表現する。「とても自由な人。彼女に学びたいと思ったことがたくさんありました。由里子さんは彼女ならではの魅力、強い香りを持っていて、それを私達に感じさせ、多くの余韻と痕跡を残していきました」。その一方で、ギョングは吉高の奇行に面食らったこともあったとか。「すごく寒い真冬の撮影で、僕がストーブの上に足を載せていたら、由里子さんがいきなり僕の足をつかみ、匂いをかいだんです。驚いて『何をするんだ!?』と慌てて彼女を跳ね返しました。本当に突拍子もない女優さんです(笑)。最初の挨拶も韓国語で『こんにちは。由里子です。お金ください』でした。3つの言葉だけ覚えてきたみたいで。撮影中も彼女は、悪い韓国語をたくさん覚えて帰りました」。
劇中で二人は心を通わせていくが、実際撮影の裏側でも、ギョングと吉高は交流を深めていったようだ。「カモメ役を演じている吉高は、抑えた演技をしているんだけど、僕は何度もその裏側の二人の明るいテンションに引っ張られそうになりました。裏側をドキュメンタリー的に撮りたいくらいでした」と行定監督。ギョングも「本番と撮影の合間があまり感じられなかったです。由里子さんと二人で話をしたり遊んでいると、カメラがすっと入ってくるという感じでした」と言っていた。確かに二人の自然な距離感を、行定監督は見事に切り取った。それをぜひ、スクリーンで体感して。【取材・文/山崎伸子】