役所広司&小栗旬『キツツキと雨』に自身の監督経験を活かす
役所広司と小栗旬が共演した『キツツキと雨』(2012年2月11日公開)が、第24回東京国際映画祭のコンペティション部門に、日本映画として唯一出品された。そこで映画祭2日目の10月23日に、役所と小栗、沖田修一監督による記者会見が六本木で開催。そこで、役所と小栗は、自身の監督経験を振り返ってのエピソードを語った。
まず会見の最初に、役所が「東京国際映画祭で上映していただいて光栄です。心温まるほんわかとした映画です」と挨拶すると、小栗も「参加できて光栄です。とても面白い映画ができあがったと思います」と、自信をのぞかせた。
小さな村を舞台に、映画撮影隊と村人たちとのおかしくも温かい関係を綴った本作。役所広司は素朴で武骨な木こりの岸克彦役を、小栗旬が気弱な新人監督・田辺幸一役を演じる。役所は『ガマの油』(09)、小栗は『シュアリー・サムデイ』 と、ふたり共監督経験があるが、本作の脚本については思うところがあったようだ。
役所は「一度映画監督をさせていただきましたが、幸一率いるクルーよりは予算のある映画でした(笑)。俳優としていろんな現場を見てきましたが、沖田さんの脚本に書かれた俳優やスタッフがかなりリアルで。みんなで現場を楽しみました」。小栗は「映画の中で逃げ出そうとするシーンがありますが、映画を撮っていた時、ああいう気持ちは毎日感じてました。自分がやりたいから監督をやったけど、いざやり始めてみたら大変で。明日雨が降れば良いのにとか、誰もいないところに行きたいとか思っていて。当時を思い出しました」と苦笑い。
監督・脚本を手掛けた沖田監督は、幸一のキャスティングについてこう明かした。「個人的に小栗さんという俳優さんが好きだったことと、『シュアリー・サムデイ』 のインタビューを読んでたら、監督さんをやられた苦労を素直に書かれていたことと。そういうこともキャスティングで考えたと思います」。役所も小栗も「脚本が面白かった」と絶賛していた。これは、完成した映画にも大いに期待がかかる。
役所と小栗の他、高良健吾、臼田あさ美、伊武雅刀、山崎努と、豪華キャストを迎えた本作。『南極料理人』(09)で高い評価を得た沖田監督だけに、ほのぼのと温かい演出も楽しみだ。また、東京国際映画祭のコンペでの健闘も祈りたい。【取材・文/山崎伸子】