三谷幸喜、『ステキな金縛り』の深津絵里と西田敏行が特別な理由は?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
三谷幸喜、『ステキな金縛り』の深津絵里と西田敏行が特別な理由は?

インタビュー

三谷幸喜、『ステキな金縛り』の深津絵里と西田敏行が特別な理由は?

脚本家や舞台演出家としてだけではなく、映画監督としても人気を博す売れっ子・三谷幸喜が、生誕50周年の年に放つ『ステキな金縛り』(10月29日公開)。三谷が監督5作目に選んだのは、長年撮ることが夢だったという法廷コメディだ。深津絵里扮する三流弁護士エミと、なぜか被告人側の証言台に立つことになった、西田敏行扮する落ち武者の幽霊との凸凹コンビが最高に愉快。そこで三谷監督にふたりのキャスティングの秘話と、映画監督として感じる特別な思い入れを語ってもらった。

殺人容疑で捕まった男が、事件の夜に「旅館で金縛りに遭っていた」と語る。その旅館を訪れた弁護士のエミが、同じような金縛り状態になった時、目を開けると落ち武者の幽霊・更科六兵衛が乗っていた。そこで彼女は、六兵衛を証人として法廷に引っ張り出そうとする。三谷映画史上初めて、女優として主演を果たした深津絵里について、三谷監督はこう語る。

「『ザ・マジックアワー』(08)でご一緒するまで、深津さんは生々しい現代の女性を演じるのが得意な女優さんというイメージが強くて、僕の作品に出るような人じゃないと思っていたんです。僕の映画って、ちょっとぶっ飛んだキャラクターの方が多いから。でも、お話した時、何か感覚が合う感じがしたんです。僕が初対面で女優さんにそう思うことって珍しくて。それでマリ役をやってもらったら、すごく良くて。理解力も表現力もあるし、コメディエンヌとしての面白さやキュートさ、動きのスピーディーさ、リズム感と、僕が求めているものを全て持ってらっしゃった」。

さらに決め手となったのは、三谷との“共通言語”だった。「僕がこうしてほしいと1つ言うだけで彼女は10も理解してくれる。僕もずっと舞台の演出をしてきたので、どんな俳優さんでも時間をかければわかってもらえる自信はあるんです。でも、深津さんはたった5秒で伝わる。そういう俳優さんはすごく大事で、正直、女優さんで同じように思った人は今まで戸田恵子さんしかいなくて、深津さんで二人目でした。だから今回、彼女に主演をお願いしたわけです」。

六兵衛役の西田敏行については「大ファンなんです!」と語る。「今後、全ての監督作に出てほしいくらいです。『ザ・マジックアワー』の怖い街のボス役ではアドリブを全部禁止していたので、次は思い切り西田さんが自由に弾けられる役をやってもらいたくて。幽霊で、しかも六兵衛が見える人と見えない人たちがいる。見えない人の前で西田さんがはしゃぎ、みんなが笑いをこらえる光景が目に浮かびました。西田さんって、共演者を笑わせるためにアドリブとかを言いますから(笑)。すごくコメディセンスがある方なので、リハからいろんなアドリブを出されるけど、本番で一番面白いのを出してくれる。実際、試写会でそれを見たお客さんが笑うのを見て、僕は嬉しいのと悔しいのとない混ぜでした(笑)」。

深津と西田の“迷”コンビをはじめ、阿部寛、竹内結子、浅野忠信、草なぎ剛、中井貴一など、オールスターキャストで贈る本作では、完成した後で意図したものとは違うテーマが見えたという三谷監督。「死んだからといって、決してゼロになってしまうのではない。すぐには戻ってこられないけど、確実にどこかで生活している、みたいに死を感じるのはどうだろうかと。ちょっと飛躍しますが、今回、震災で大勢の方が亡くなり、今残された家族の方が頑張って生きてらっしゃる。そんな方々をちょっとでも勇気づけられたら良いなあと」。思い切りゲラゲラ笑って、最後には予想外の感動が用意されている『ステキな金縛り』。いろんな面で心憎い快作だと思う。【取材・文/山崎伸子】

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