ヴィム・ヴェンダースの映画に楠田枝里子が感激「喜びと興奮で涙しました」
『パリ、テキサス』(84)や『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(99)のヴィム・ヴェンダース監督が、3Dのドキュメンタリー映画『Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2012年2月25日公開)を引っさげ、第24回東京国際映画祭で来日。10月25日、渋谷の映画美学校で来日記者会見を開いた。ゲストとして、彼やピナと親交が深かった友人の楠田枝里子も登壇して、ピナの偉大さを語った。ヴェンダース監督は、10月27日に東日本大震災の被災地・福島も訪れる予定だ。
2009年に急逝した天才舞踏家ピナ・バウシュの躍動感あふれるダンスを、彼女の思いを受け継いだダンサーたちと共に、友人のヴェンダース監督が見事にフィルムに焼き付けた本作。「ピナと一緒に映画を作りたいと、20年くらい前から考えていた。でも、2009年に撮影をスタートする準備にかかった時、突然ピナが亡くなり、みんながとても衝撃を受けました。一時はキャンセルしようと思ったけど、最終的にはダンサーたちが撮影を始めるよう僕を説得してくれました」。
ピナのダンスに出会うまで、全くダンスには興味がなかったというヴェンダース監督。「でも、25年前に彼女の舞台をヴェネチアで初めて見て、自分の人生を変えてしまうくらいに感動しました。ずっと泣いていたんです。新しさはもちろん、圧倒的に揺さぶられるものがあった。男と女の話に関して、映画でもこれほど深く描いたものはないと思いました」。
ヴェンダース監督は、本作で初めて3Dカメラを使ったが、その可能性に驚きつつも、その乱用については警鐘を鳴らす。「私は3D技術は言語だと思っています。言語は使いこなして初めてものになる。でも、今はアトラクション的なものとしかとらえられていない。我々、映像作家がちゃんと使いこなしていかないといけない」。
また、ベンダース監督は、10月27日に被災地・福島を訪れることについて、「ピナの映画には、ヒーリングの力があると思っています。今回、東京でやれるなら次に福島でやってみたいとお話を進めましたが、実現できて嬉しいです。また、この目で被災地を見て、できれば車で回ってみたい」。監督の母国ドイツは脱原発を宣言したこともあり、「今回のことは、未来のために大変な教訓となりました」とも語った。
その後、ヴェンダース監督に楠田枝里子が花束を渡そうと登壇。彼女は「ピナを熱愛する一人として、映像で見ることが怖かったけど、その心配は全く無用でした。素晴らしい作品でした。ピナに再び会えた喜びと興奮で何度か涙しました」と、興奮しながらベンダースに訴えかけた。1時間10分と長丁場の会見だったが、ヴェンダース監督のフィルメーカーとしてのこだわりから、ピナへの思いがずっしりと胸に伝わってくる濃密な内容のイベントとなった。【取材・文/山崎伸子】