仲里依紗に石井裕也監督がマイケルの動きをリクエスト!?

インタビュー

仲里依紗に石井裕也監督がマイケルの動きをリクエスト!?

仲里依紗が『ハラがコレなんで』(11月5日公開)で演じたのは、ただの妊婦ではなく、“妊婦ヒーロー”だ。監督・脚本を手掛けたのは、『川の底からこんにちは』(10)や『あぜ道のダンディ』(11)の石井裕也監督。彼女は石井ワールドならではの型破りな肝っ玉妊婦役にトライした。しかも、石井監督の演出はかなり独特だったということで、仲里依紗に本作の舞台裏について聞いてみた。

金なし・家なし・仕事なし・夫なしと、ザッツ崖っぷち状態の未婚の妊婦・原光子。彼女の信条は、義理人情を大切にし、粋であること。生まれ育った長屋に戻った光子は、「どんと行こう」とスーパーアグレッシブに生きていく。光子との共通点について、仲は「風の向くままというか、吹かなければ待てば良いさってところが似ています」という。「私も自分のペースを守って、決めたらどんと行くタイプ。細かいことは気にしないです。目の前のことを片付けていくことをやっていたら、風に流されて今に至ったという感じです」。

逆境における光子の肝の据わり方は半端じゃない。彼女の口癖である「OK」という言い回しについては、石井監督の言い方を真似たという。「脚本だけだとわからなかったから、監督とはその場で一緒に作っていったという感じでした」。その演出はかなり細かく、伝え方も独特だったとか。「『あと0.1秒遅く』とか『宇宙みたいに』とか言われました。テーブルを拭くシーンでは、『マイケル・ジャクソンみたいに動いてください』って(笑)。それも監督が実際にやってくれたんですよ。ちょっとわからない点もありましたが、最終的にはすごく面白く仕上がってたから良かったです。でも、一度石井監督の頭の中を見てみたいですね」。

そんな奇妙な演出をする石井監督はどういう人なのか。「すごく口数が少ない方でした。私もべらべら監督に聞いたり、コミュニケーションを取ったりするタイプじゃないんですが、監督もそうで。でも、釜山映画祭で初めて監督と一緒にお食事をした時、お酒が入ったら、本当に普通の28歳の青年だったのでビックリしました。石井監督は脚本もできるし、才能がありすぎて、どういう人なんだろうって謎だらけでしたから。息抜きできてるのかなって思っていたら、釜山ではめちゃくちゃ息抜きされてて、安心しました(笑)。監督の素の一面が見られて嬉しかったです」。

本作では、失われつつある義理人情や粋な生き方が描かれているが、彼女はそれをどうとらえたのだろうか。「義理人情って今の現代の子には難しいですよね。でも、こういう時代だからこそ、今の若い子たちに見てほしい」。劇中では、光子たちがみんなで福島へ行くという設定があるが、本作の撮影終了後に、偶然、東日本大震災が起こってしまった。彼女は言う。「本作には悪い人、人をけなしたりする人は一人も出てこないんです。みんながどん底にいるけど、どうにかして助け合っていく話です。そういう人助けのチームワークとか、日本人の粋が描かれているので、今の時代にぴったりです。この映画が皆さんの力になってくれれば良いなと思います」。

「どんと行こう」という、とことんアグレッシブな妊婦ヒーロー・光子に、仲里依紗の持ち前の頼もしいキャラクターが加わって、まさに鬼に金棒だ。こんな妊婦がいたら、今の日本に元気と勇気を与えてくれることは間違いないだろう。そんな新鮮でパワフルな人情喜劇を見て、もやもやした気分を吹き飛ばそう。【取材・文/山崎伸子】

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