ドキュメンタリー界の巨匠フレデリック・ワイズマンの全作品が見られる特集上映が開催中!
合衆国裁判所で一般上映が禁止された唯一の作品『チチカット・フォーリーズ』(67)を筆頭に、40数年に渡って様々な事象を撮り続けてきたドキュメンタリー作家、フレデリック・ワイズマン。第24回東京国際映画祭で最新作『クレイジーホース』(2012年夏公開)が上映されたこともあって、多くの映像作家から再注目されている同監督の、過去作が一気に見られる特集上映「フレデリック・ワイズマンのすべて」が、ユーロスペースで開催中だ。
上映作品のラインナップを見てみると、精神異常犯罪者用に設立された刑務所の実態を克明に映し出した初監督作『チチカット・フォーリーズ』や、ニューヨーク市の福祉センターを舞台に、福祉行政のありようを描いた『福祉』(75)、フロリダ州最大のDV被害者保護施設「スプリング」に集まった被害者たちの姿を活写した『DV ドメスティック・バイオレンス』(01)といった重厚なタッチの作品が並ぶ。また『基礎訓練』(71)、『パナマ運河地帯』(77)、『ボクシング・ジム』(10)など、日本初公開となる8作品も併せて上映されるので、「ワイズマン作品はすべて見た」というドキュメンタリーファンも、新鮮な気持ちでイベントを楽しむことができる。
そんなワイズマン監督に、数ある映画のジャンルのなかからドキュメンタリーを選択した理由について聞いてみたところ、「私が映画製作に取り組み始めた1960年代に、撮影関係の技術が飛躍的に向上したことが大きいですね。大きな照明を用意しなくても、一定の明かりさえあれば撮影ができるようになり、同時録音も可能になった。これによって、撮影できる場所や対象の選択範囲が格段に広がったことが、私がドキュメンタリーを選択した一番の理由ですね」と答えてくれた。
ドラマ作品とはひと味違う、ドキュメンタリー映画の魅力を存分に堪能することができる特集上映「フレデリック・ワイズマンのすべて」。イベントは11月25日(金)まで実施中なので、この機会を利用して、是非、ワイズマン監督作品の素晴らしさを体感してもらいたい。【六壁露伴/Movie Walker】