『指輪をはめたい』山田孝之らの起用理由は「この人の演技を客として見て感動したことがあるか」
芥川賞受賞作家・伊藤たかみ原作を映画化した『指輪をはめたい』(11月19日公開)の完成報告会見が11月3日、ザ・キャピトルホテル東急で行われ、出演者の山田孝之、小西真奈美、真木よう子、池脇千鶴、岩田ユキ監督が出席した。
本作撮影現場以来、約1年ぶりにメインキャストがそろったこの日。記憶をなくした主人公を演じた山田は、本作について、「ファンタジックなところが女性に楽しまれると思いますが、男性にも是非見てもらいたい。男女で見て、コミュニケーションのツールになったら良いなと思います」と、作品に込めた思いを語り、岩田監督は「伊藤たかみさんの原作はコミカルな設定ながらも、クールな男性を描いた作品ですが、私がモテない目線でアンサーを返しました」とコメントした。
本作出演の決め手を、山田は「前後の仕事との違いや、初の女性監督だったりと、いろんな要素が今までと違う作品です。ここでぎりぎり嘘にならない程度でお答えすると(笑)、自分も30歳手前になって結婚を考えなきゃいけない年になって、輝彦を通して結婚というものを考え、未開拓の地に足を踏み入れるための、何かがあったりなかったりするんじゃないかなと思い、オファーを受けました」と明かした。山田演じる輝彦の一人目の恋人、会社の先輩でクールで完璧な才女・住友智恵を演じた小西は、自身の役柄について「脚本を読んだ時に才色兼備の智恵が恋愛に関しては一直線に、なりふり構わず走り回るのが人間臭くて、可愛いなと思えて、現場ではそれを大事に輝彦の前だけでは乙女でいたいと思って演じました」と語った。二人目の恋人、風俗店に勤めるセクシーな潮崎めぐみを演じた真木は、「今までにない役を演じた」と話し、「台本を読ませていただいて、まさか自分がめぐみでオファーが来ていると思わなくて、びっくりしました。そういう役を私に挑戦させていただけたのが嬉しかったですね。それが一番出たいと思ったきっかけです」と振り返った。輝彦の三人目の恋人、公園で人形劇屋台をしている家庭的な鈴木和歌子を演じた池脇は、本作は「ラブファンタジー哲学」だと言い続けている。いそうで、いなさそうな、手を差し伸べて助けてあげたくなるような役どころだが、「相手に尽くしたい、大好きだという思いが空回りする残念な子だなって思っていて、二歩も三歩も五歩も下がっていて、いつも『ごめんなさい、ごめんなさい』って前に出られない女の子だと監督にも言われたので、監督の仰るとおりに体現できればと思いながら演じていました」と裏話を明かした。岩田監督は、4人の起用理由を「この人の演技を客として見て感動したことがあるかどうか。三股かけていた男が、記憶を失って恋人を探すという漫画チックな設定ですが、主人公の抱えている痛みとか必死さを人間らしく表現できる人を選びました」と経緯を語った。
劇中では3人の彼女持ちとなる山田だが、自身が「輝彦と同じようなシチュエーションになったら?」という質問に、山田は「男性記者の方に羨ましいと言われたことはありますが、名前を間違えないかとか、気を使わなければいけないですし、そこまで労力を使う利点がなく、大変なことの方が多いと思います」と分析。女性陣からも、「他人事だったらわかりませんが、自分がそこに絡んでくるとやはり許せない」(池脇)、「演じてる時は、めぐみとして輝彦が好きだっていう感情の方が大きかったですが、たとえば今、三股されていたら許せないですね」(真木)、「許せる人なんていなんじゃないですか? でも輝彦のキャラがあまりにも素敵なので、彼女になるのは嫌だけど、友達になって話は聞いてみたい感じです」(小西)と非難が集中!
メガホンを取ると共に、脚本も担当した岩田監督は、個性的なキャラクターたちに「それぞれが極端で、漫画っぽさも持っているキャラクターですが、それでも人間として全員平等でいるべきだと思っていて、この映画の皆は平等に、はしたないですね。人間の本能を感じる。同じように綺麗なことも、汚いことも与えると人間らしくなる。必死な人どうしの物語なので、ぶつかるから物語が生まれるんです」と脚本を作っていくうえでのポイントを挙げた。【Movie Walker】