『けいおん!』山田尚子監督が語る「萌える女の子のポイントは、内向きの関節!」

インタビュー

『けいおん!』山田尚子監督が語る「萌える女の子のポイントは、内向きの関節!」

数々の社会現象を巻き起こしたアニメ『けいおん!』が待望の映画化(公開中)。軽音部メンバーのとびっきりの笑顔がスクリーンに登場する。

テレビアニメ最終回では、軽音部3年生の唯(ゆい)、澪(みお)、律(りつ)、紬(つむぎ)4人の卒業式が描かれたが、映画版では下級生の梓(あずさ)も交え、卒業旅行でイギリスへと出発。彼女たちならではの珍道中はもちろんのこと、テレビでは描かれなかった卒業までの隠れたエピソードが披露される。そこで、気鋭の若手女性監督・山田尚子監督にインタビュー。本作への愛情をたっぷりと語ってもらった。

映画化に当たって、「唯たちは銀幕でもきっと映えるはず!」と意気込んでいたという監督。映画ならではのチャレンジを聞いてみた。「テレビとスクリーンとの見え方の違いは、日々研究していて。レイアウトにはすごく気を使いましたね。被写体である唯たちとカメラマンの間にある空気のようなものを表現したかったので、望遠レンズを使ってみたり、よりリアルタイムに彼女たちを追っているドキュメンタリー感を出すために、手持ちカメラのイメージを出してみたりと、映像的なチャレンジで色々なこだわりを突き詰めました」。

最もこだわったのは、彼女たちをそこに生きている存在として描く“生っぽさ”だ。「唯たちはロンドンに行くといっても軽いノリなんです。高校生活の思い出作りと思っているので、記念撮影をするために制服も楽器も持って行っちゃう(笑)。私自身、映画だからといって、唯たちを見る目、扱い方を変えないように意識しました。“放課後ティータイム”(=劇中のバンド名)はどこに行ってもやっぱり変わらない。普通の女子高生なんです」。

元々はかきふらい原作の4コマ漫画である本作。“普通を描く”というのは、アニメ化する当初から意識していた点だという。「アニメ化するに当たっては、スタッフ間で『青春モノを作ろう』というのが共通意識。高校生であることや、学校の臨場感を大事にしたいと思って取り組んできました。声優さんとの顔合わせの時も『とにかく普通にやってください』とお願いして」。

“普通”を題材に描くのは、難しいように感じるが。「実際、“普通”というキーワードって、すごく難しいんです。よく『あの子って普通の子だから』とか言いますが、普通って形のないもの。そう感じるのは、人の価値観一つで。だからこそ、“普通の子”と言われる子を研究したくなって。すると、すごく面白くて魅力的で! こんな魅力的な子のことを普通って言うんだ、普通って魅力的なことなんだって思ったんです」。学園祭に熱くなったり、前髪を切りすぎてしまうのも大事件。日常に潜む感情、感動を見事にすくい取った点こそ、多くの層に支持を受けた理由だろう。

とはいえ、もちろん萌えポイントもしっかりと押さえているのが本作。可愛い女の子を描くうえで、具体的に気をつけていることは? 「手の位置や脇の締め方。それは作画監督の堀口さんも、ものすごくこだわっているんですけど、『絶対にここには置かない』という手の位置もあるんですよ! それと関節を内側に曲げること。律っちゃんはドラムなので、どうしても脚など開き気味ですが、どこかの関節は必ず内側に曲げています。唯なんかは、足首に“ぐねり癖”がついているくらいの内側っぷり(笑)」。

全ての質問に嬉しそうに応える監督の姿から、本作への愛情がにじみ出す。「映画をやってみて、スタッフ一人、一人の熱意や愛情、『けいおん!』のために研ぎ澄ます精神というのが改めてよく見えました。本当に愛されている作品だなと思ったし、私にとっても宝物です」。

テレビ最終回で披露された卒業ソング「天使にふれたよ!」では、“思い出は宝物”と語りかけるメンバーたち。映画では、この曲に込められた思いが丁寧に描かれている。温かな思いがたくさん詰め込まれた本作を、是非スクリーンで堪能してほしい。【取材・文/成田おり枝】

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