地方から日本を元気に! ますます増える地域発信型映画が日本映画界を変えるか
近年、地方から発信されるご当地映画が次々と登場している。今年公開された中で直近の作品だけを挙げてみても、『五日市物語』(あきるの市)、『ラーメン侍』(福岡市)、『サルベージ・マイス』(広島市)、『恋谷橋』(鳥取県)など、枚挙に暇がない。そんな中、日本全国6地域の“ご当地短編映画”を集めて東京・大阪の映画館で上映するイベント「あなたの町から日本中を元気にする!沖縄国際映画祭 地域発信型映画」が開催されている(12月9日まで)。
本企画は今年3月に開催された沖縄国際映画祭から新たな試みの一つとしてメインプログラムに組み込まれ、大きな話題となったもの。吉本興業が制作をバックアップし、地元への熱い思いを持った地域住民が脚本や出演などで参加した映画を上映することで、地域活性化を図ろうというものだ。
今回のイベントでは、陣内智則主演の『ソラからジェシカ』(千葉県成田市)、フットボールアワー・岩尾望主演の『雪の中のしろうさぎ』(新潟県十日町市)、吉永淳主演の『とんねるらんでぶー』(静岡県三ヶ日町)、なだぎ武出演の『謝謝OSAKA』(大阪市)、次長課長・河本準一出演の『ホルモン女』(岡山県津山市)、地元住民が多数出演したドキュメンタリー『一粒の種』(沖縄県宮古島市)といった6作品が上映された。いずれも各地の風土や名産品、さらに地域住民の魅力を映画の中で巧みに取り上げ、地元愛にあふれた作品だ。たとえば『ソラからジェシカ』は、成田市のご当地映画ということもあって、JAL国際線機内映画プログラムで放送されるなど、地域を巻き込んだ盛り上がりをみせている。
このように、地域経済活性の起爆剤として住民参加型の映画を製作する試みは年々増加しているが、それはなぜか?撮影隊が滞在することによって見込まれる経済効果といった単純なメリットや、地域の魅力を全国にアピールできるということももちろんあるが、普段見られない映画制作の風景が、“お祭り効果”で、元気のない町や文化を活性化できるといった理由が大きいのではないだろうか。そして、ロケの誘致や撮影支援を行う公的機関、フィルム・コミッションが全国各地で発足し、地域住民と共に映画製作の現場を支える体制が整ってきていることも重要なポイントだろう。全国にあるフィルム・コミッションの中には、韓国やタイなど海外作品のロケを誘致するなど、グローバルな展開をする団体もあり、地方での映画制作は決して特別なことではないのだ。
遡ってみれば、大林宣彦監督の“尾道三部作(『転校生』(82)、『時をかける少女』(83)、『さびしんぼう』(85))”は、地域発信型の先駆けと言えるかもしれない。監督の故郷、広島県尾道市で多くの地元賛同者の協力を得て制作された一連の作品は、熱狂的なファンを生み、ロケ地巡りが行われるなど、尾道市を観光地として認知させることにも成功。今なお多くのファンが訪れている。自然災害や、長引く不況など暗い話題が続く日本。第二の“尾道三部作”となる可能性を秘め、全国の至る地域から発信されている様々なご当地映画にこそ、日本を活気づけるヒントが隠されているかもしれない。【トライワークス】